「極陰は陽に転じる」・・・これ易の真理にして、宇宙の「大法」である。
けだしこの大宇宙は、つねに動的バランスを保ちながら、
無窮に進展しているが故である。
[ 森信三 一日一語 ] より
作成者アーカイブ: nakajyo
飼いならされる
人間は何物かにたよったり、結構づくめな生活に慣れると・・・
要するに飼いならされると、いつしか自己防衛本能が鈍る。
[ 森信三 一日一語 ] より
動かず
暗室に入ったように、周囲の様子が見え出すまでは、じっとして動かない。・・・
これが新たな環境に移った場合のわたくしの流儀です。
[ 森信三 一日一語 ] より
心に残る相続案件《3》 野口レポートNo343
10数年ほど前に手がけた相続案件がありました。相続人は5人です。独身の姉(長女)がすべてを仕切っています。姉の依頼を受け、妹さん(二女)のところへ行きました。姉と妹との間には深い確執があり、ここを合意に導けるかが勝負となりました。
妹さんにすれば私は敵(姉)の手先です。最初は玄関にも入れてくれません。数回通っているうちに真心と公平な対応が通じ、最後は心を開いてくれました。相続手続きも無事終わり、今度は逆に全幅の信頼を受けてしまい、何かあると私に相談してくれます。
それから8年後に姉は亡くなりました。最近、妹さんから電話もなく心配していました。大病を患い手術を受けたと後で知りました。幸い手術は成功したとのことです。
その後、野口さんには話しておきたいと、妹さんから分厚い手紙を頂きました。幼い頃からの辛い思いや、姉との確執もビッシリ書いてありました。私はその手紙を読んで、このままにしておいてはいけないと、次のような返事を書きました。以下略文
「このようなお手紙を私にくださるには勇気がいったことと思います。子供の頃から色々なことがありましたね。人を恨まなければならない環境にあったことはよく分かりました。だが、人を恨むことは、ものすごいエネルギーを消耗します。
亡くなったお姉さんを許してあげたらどうでしょうか、今まで辛い思いをされたことは十分承知です。人を恨みながら死んでしまったら、その遺恨は来世までのこり自分に還ってきます。
恨みはどこかで断ち切らねばエンドレスとなり続きます。そうは言っても、気持ちは簡単に切りかえられないかも知れません。
だが、お姉さんを許してあげてください。仏壇に手を合わせ、嘘でもいいからお姉さんを許すと言ってください。毎日続けていると本当に許せる気持ちになります。
人に言えないご苦労、言葉で表せない辛さはお察しします。大病を乗り越えたことは、このまま恨みを残して死んではいけないと、天が時間を与えくださったのです。
勝手なことを書いてしまいました。お許しください。だが、このままではご自身が不幸で終わってしまいます。原因はすべて自分の心のなかにあると思ってください。 野口賢次 拝」
妹さんは涙をボロボロ出しながら、この手紙を読んでくれたそうです。「そんな気持ちになれるものか」と思いながらも、仏壇に手を合わせ、お姉さんを許すと言ってくれたそうです。
しばらくし、妹さんからお礼を言われました。「物心がついてから60年、一時も頭から離れなかったシコリが取れ、気持ちが楽になりました。今が一番幸せな気がします。」うれしい言葉でした。
10数年前に完了したと思っていた相続案件でしたが、本当の意味で終わったことを感じました。
死因贈与と遺贈の違い 中條レポートNo287
相続対策において、「死因贈与」は有効な選択肢の一つです。
これは贈与者が亡くなったときに効力を生じる贈与契約であり、遺言による遺贈と類似していますが、いくつかの重要な違いがあります。
ここでは両者を比較しながら、死因贈与の実務での活用について解説します。
まず、共通点としては、どちらも贈与者(遺言者)が死亡することで効力を生じ、相続手続の一環として財産の承継が行われる点です。
しかし、成立の仕方に明確な違いがあります。
遺贈は遺言による単独行為であり、遺言者の一方的な意思で作成・撤回が可能です。
死因贈与も贈与者の一方的な意思表示で撤回可能ですが、一定の条件のもと撤回を制限することも可能です。
「〇〇をすることを条件に私が死んだら贈与する」という契約では、贈与を受ける人が〇〇を行うと贈与者が一方的に取り消せなくなります。
また遺贈では、受遺者が遺贈を放棄し受け取らないことも可能ですが、死因贈与は契約ですので放棄することが難しくなります。必ず受け継いでもらいたいもの(自宅等)を遺したいときの選択肢にもなります。
また不動産では贈与者の生前に、受贈者の仮登記を行うことも出来ます。
また、形式面でも違いがあります。
遺言は原則として自筆証書または公正証書など法律に則った形式で作成しなければ無効となります。
一方、死因贈与契約は法律上決まった形式はないため簡易に作成出来ます。全文ワープロで作成した贈与契約書に当事者が署名捺印すれば有効に成立します。
但し後日紛争にならないよう、当事者の真意で行ったことを証明できる工夫が必要になります。
死因贈与は、遺言では対応しにくい個別事情に対応できる手法です。適切に活用することで、贈与者と受贈者双方の意向に沿った相続が実現できます。
実務では、契約の明文化、公正証書化、負担の明確化(負担の履行が証明出来ないと紛争の元になる)が重要なポイントとなります。
適用場面や法的効果を理解したうえで、慎重に取り扱うことが求められます。
読書
読書は実践への最深の原動力
[ 森信三 一日一語 ] より
良書との出会いはありがたいです。
道徳教育
いかにしてテレビに打ち克つ子どもにするか・・・
教師たるものはこの一点に、
道徳教育のすべてをかけねばなるまい。
[ 森信三 一日一語 ] より
人間教育
教師自身が四六時中腰骨を立てつらぬくこと・・・
そしてこれが人間的主体の確立上、
最有効かつ最的確な方途だとの確信に到達し、
その上でそのタネ蒔きを子どもらに対しても始めること。
ここに人間教育の最大の眼目ありと知るべし。
[ 森信三 一日一語 ] より
遺留分の金銭請求権化 中條レポートNo286
2019年7月1日施行の改正相続法により、「遺留分減殺請求」が「遺留分侵害額請求」に変更されました。この改正の最大の特徴は、遺留分の請求が物権的請求から金銭請求権になったことです。
1. 従来の「遺留分減殺請求」の問題点
改正前は、遺留分を侵害された相続人が遺産の現物(不動産や株式など)を直接取り戻す権利を持っていました。
例えば、不動産を遺贈された相続人に対し、遺留分を持つ相続人がその一部の返還を求めることができました。そのため不動産が共有状態になり相続人間のトラブルの原因になりやすい等の問題点がありました。
こうした課題を解決するために、法改正が行われました。
2. 「遺留分侵害額請求」とは
改正後は、遺産の現物を取り戻す権利ではなく金銭での請求権に変更 されました。つまり、遺留分を侵害された相続人は、侵害された遺留分に相当する金銭を請求する権利 を持つことになります。
この変更により、不動産などが共有にならずトラブルが減る等のメリットが出ました。
一方で、「遺留分侵害額請求」は 金銭債権 として扱われるため、 請求相手に支払い能力がない場合、問題が発生します。
支払えなかった場合には 遅延利息を請求されることもあり、財産が自宅などで売却できない場合には解決が難しくなる可能性があります。
4. まとめ
今回の法改正により、遺留分の請求は「遺産の現物返還」から「金銭請求」になりました。この変更により、遺言執行が遺留分の請求によって妨げられることがなくなり、遺産分割の混乱を防ぐ効果が期待 されています。
しかし、遺留分を請求された受遺者に支払い能力がない場合の対応という新たな課題もあります。そのため、遺留分を侵害する内容の遺言書を作成する際には、遺留分相当額の支払いを準備しておくことが重要 です。
遺言作成に専門家のアドバイスが欠かせない場面です。
気を使い、お金を使い、時間を使う 野口レポートNo342
相続の仕事をしていると弁護士先生のお世話にならなければ対応ができないことがあります。下記の項目はよくある事例です。
① 遺留分侵害額請求権の行使、もしくは行使された時の対応
② ウンともスンとも言わず、相手が無視を続ける
③ 調停が不調に終わり審判に移行してしまった
④ 何回協議しても遺産分割がまとまらず法律で裁くしかない
⑤ 相手が代理人(弁護士)を立ててきた
以下は弁護士先生にお世話になった典型的な事例です。
◎兄と弟の2人兄弟で弟さんからの相談です。兄は奥様と長男と長女の4人家族でした。
高齢の兄は数年前に奥様に先立たれひとり暮らしです。介護が必要となり、近くにいる弟夫婦が、買い物、食事の支度、入浴のお世話、通院の付き添いなど、親身になって世話をしています。
嫁いだ長女は義父母と同居しており、独身で疎遠の長男は離れた所に住んでいます。2人とも父親の世話を叔父夫婦にまかせっきりで、有難いとの感謝の気持ちがありません。
兄は全財産を弟に遺贈するとの公正証書遺言を残していました。遠くにいる疎遠の身内より、親身にみなって世話をしてくれている身近な人に自分の財産を渡したくなるのは人情です。
そして兄が亡くなりました。49日の法要も済ませ、遺言があること、遺留分を戻すことを伝えました。姪は納得したのですが、甥は理不尽な要求を繰り返してきます。さらに弁護士から遺留分侵害額請求の内容証明が届き裁判となりました。正義はこちらにあります。だが常識が法律に勝てぬことなどこの世界の常です。
いよいよ裁判も大詰めとなり、明日は原告(甥)と被告(叔父)の証人尋問です。普通の人が法廷に立つなど生涯に一度あるかないかです。本人は緊張し前夜は眠れなかったそうです。自分達がやってきたことを「ありのまま話せばよい」と背中を押しました。
いよいよ開廷です。傍聴席のすぐ前に証人台があり、傍に私がいるので本人も気持ちが楽になったそうです。正面1段上に裁判官席があり、その下に書記官席、左手に原告の弁護士席、右手に被告の弁護士席があります。
互いの弁護士が被告と原告に一通りの質問をしたあと、最後に裁判官から「それでは裁判所からの質問です」と、双方にいくつかの質問があり、3時間ほどで閉廷となりました。
弁護士チームの適切な対応も功を奏し、数日後に当方の主張にそった和解が成立し、ご夫婦は長い間の呪縛から解放されました。気がつけば内容証明が届いてから3年の歳月が過ぎていました。
最後まで寄りそってきましたが、やむを得ず裁判となれば、精神的かつ経済的な負担に加え、貴重な時間を費やします。そして何よりも大切な財産(家族や親族の絆)を失います。