途中でやめられる後見制度へ 中條レポートNo291

成年後見制度は、判断能力が不十分な方を保護し支援するための制度です。現行制度では、家庭裁判所で後見開始の審判が出ると、原則として本人が亡くなるまで後見が続きます。このため、状況が変化しても「途中でやめる」ことは難しく、支援内容や期間を柔軟に見直せないという課題がありました。

今回の見直し議論では、以下のような方向性が検討されています。
〇途中終了の明確化支援が不要になった場合や、他の支援制度に切り替える場合に、家庭裁判所の判断で後見を終了できる仕組みを整備する。
〇期間設定型後見の導入
最初から一定期間のみ後見を行い、その後は延長の要否を判断する方式を検討。

もっとも、後見終了には新たな課題も伴います。
〇金融機関の対応
後見終了後、預金の引き出しに際し、金融機関が「後見人がいないと取引できない」と判断することが予想されます。終了の事実を適切に伝え、本人や家族が円滑に取引できる仕組みづくりが求められます。
〇施設側の対応
施設入所時に「後見人がいるから契約を受けた」ケースで、後見が終了した時の施設がどのように対応するかが問題です。契約条件や支援体制の見直しが求められます。
〇業務量増大
後見終了に伴い、後見業務に携わる関係者、家庭裁判所の業務量の増加が予測されます。増加することにどのように対応するかが現場では問題視されています。

制度の柔軟化は、本人の権利擁護と生活の安定をどう両立させるかが鍵です。
後見を終了しても、金融取引や生活環境が途切れないための連携体制を整えることが不可欠です。
改正が実現すれば、成年後見制度は「一度始めたら続く制度」から「状況に応じて使い分ける制度」へと変わっていくでしょう。
そのためには、利用者・家族・専門職・関係機関の情報共有と実務ルールの整備が重要となります。

蘇る集落 野口レポートNo347

歴史には興味がありました。特に縄文時代や弥生時代など、古代の歴史にはロマンがあります。考古学の道へ進むことが子供の頃からの夢でした。だが、人生いろいろです。気がつけばGスタンドから相続実務家へと、考古学とは全く縁のない道を歩んでいます。

戦後の住宅政策が軌道にのりはじめた昭和32年頃の話です。川崎の井田丘陵で宅地の開発が始まりました。造成中の丘からは弥生時代の土器の破片がたくさん出てきました。

工事のおじさん達にはただのガラクタですが、野口少年にとっては宝物です。造成現場は宝の山でした。おじさん達に何度追い払らわれても、スキをみてはシャベル片手に造成現場で破片を採取しました。採取した破片は一つひとつ丁寧につなぎ合わせ復元していきます。壷や鉢がその輪郭を表します。復元した土器を手にすると、はるか大昔にタイムスリップし、この壺を手にしていた古代人の想いや生活までが目に浮かび胸がときめきます。

話を現代に戻します。以前Aさんの地主相続をコーディネートしました。数億円の相続税も何とか納付でき一息です。Aさんは近くの丘にある生産緑地を相続しました。主たる農業従事者(父)の死亡で、猶予されていた生産緑地の相続税は免除となり、宅地転用が可能です。相続は生産緑地を宅地にできるチャンスです。

引き続き生産緑地として相続すれば、生涯営農や担保の提供を条件に農地に課せられる相続税がふたたび納税猶予(免除でない)されます。どちらを選ぶか、この選択は都市農家にとって重要です。

Aさんには遡及課税の恐ろしさと生涯営農のリスクを十分説明し、生産緑地を解除し宅地転用を選んでいただきました。

換金も土地有効活用のひとつです。相続は入り口であり、出口が大切です。大事なことは、相続後に明るく楽しくゆとりある人生を過ごせるかです。借金コンクリートの立派なマンションより、無借金木造アパートの方が、お金が残ることがあります。いかに手元にお金を残せるか、見栄でなく実を取ることが大切です。

宅地転用した生産緑地の買主は戸建業者です。この付近は埋蔵文化財包蔵地域内にあるため「文化財保護法」の制限があります。

考古学に興味のある私は、丘陵にある造成現場のロケーションを一目見て、必ず遺跡がでると思いました。試掘調査で予測したとおりに溝状遺構が確認されました。

教育委員会文化財課と協議の結果、正式な発掘調査が必要となりました。調査が終わるまで土地に手はつけられません。調査費用は地主の負担となります。Aさんに負担はかかりましたが、農業後継者や生涯営農のリスクを考えると、生産緑地を宅地転用し、売却換金した判断は間違いでなかったと思っています。

はるか大昔、古代人が集落を築いていた丘が、数千年の時を経て現代人の戸建集落として甦ります。歴史はまさにロマンです。

「救い」

「救い」とは「自分のような者でも、尚ここにこの世の生が許されている」・・・
という謝念でもあろうか。
そしてその見捨てない最後の絶対無限な力に対して、
人びとはこれを神と呼び仏と名づける。
[ 森信三 一日一語 ] より

比較

善悪・優劣・美醜などは、すべて相対的で、
何ら絶対的なものではない。
何となれば、いずれも「比較」によって生まれるのであり、
随って尺度のいかんによっては、逆にもなりかねないからである。
[ 森信三 一日一語 ] より

肩書

人間は退職して初めて肩書の有難さがわかる。
だが、この点を率直に言う人はほとんどいない。
それというのも、それが言えるということは、
すでに肩書を越えた世界に生きていなければ出来ぬことだからである。
[ 森信三 一日一語 ] より

出所・進退

公生涯にあっては、出所・進退の時機を誤らぬことが何よりも肝要。
だが相当な人でも、とかく誤りがちである。
これ人間は自分の顔が見えぬように、
自分のことは分からぬからである。
[ 森信三 一日一語 ] より

流水不争先

「流水不争先」・・
現世的な栄進の道を、アクセク生きてきた人が、
あげくの果てに開眼させられた一境地といってよかろう。
[ 森信三 一日一語 ] より

流水不争先
川を流れる水は、先を争って流れているように見えるが、高きから低きに流れているに過ぎない。 それを争い、競って、流れているように見えるのは、それを見ている人間の心に「争い事」の感覚が充満していて、目が曇っているからだ。

相続登記義務化の現実と対応 中條レポートNo290

令和6年4月から、相続登記が義務化されました。具体的には、不動産を相続した方は、相続があったことを知った日から3年以内に相続登記を行わなければなりません。

違反すると10万円以下の過料が課されるとされています。しかし、現時点で法務省がどの程度本気でこの規定を運用するのか、実際のところは不透明です。

もっとも、背景には所有者不明土地問題が深刻化している事情があります。登記がされないことで土地の権利関係が不明となり、公共事業や民間取引に支障が出る事例が多発しています。

こうした問題の解消を目的として制度が整備された以上、一定の周知期間を経て、実際に過料を科す運用がなされる可能性は高いでしょう。

ただし、仮に過料の対象となった場合でも、いきなり罰金が課されるわけではありません。通常は法務局から「催告」がなされ、それでも履行しない場合に初めて制裁が検討される運用が想定されています。

したがって、催告を受けてからでも相続登記を行えば、過料を免れることができます。また、相続登記にはもう一つ選択肢があります。
遺産分割が困難な場合。名義変更を急ぐ事情がない場合(亡くなった父親名義の家に母親が住んでいて、母親が亡くなってから子供たちで相続登記をすればよい。等々)「相続人である旨の申出(相続人申告登記)」を行うことで義務を履行したとみなされます

この付記登記は登録免許税がかからず、経済的負担も軽減される利点があります。実務上も有効な方法の一つといえます。

なお、未登記の建物は世の中に多数存在します。建物の保存登記も本来は義務ですが、これまで過料が課された事例はほとんど耳にしません。

これらの点を踏まえると、制度としては厳格化されても、実際にはある程度柔軟に対応がなされる可能性があります。

「相続登記を行わなければならない」
ということを心配するのではなく、状況に応じて適宜対処することが重要です。
義務化という言葉に過度に恐れる必要はありません。

相続税の3区分 野口レポートNo346

相続税には大きく分けて3つの区分があります。相談を受け、この相続はどの区分に該当するのかを最初に判断します。

《相続税が課税されない人》
自宅の土地は25坪の建売住宅です。他に不動産は所有していません。預貯金などが1500万円です。相続人は配偶者と子が2人です。一般的なサラリーマン家庭の財産と家族構成です。

相続税基礎控除以下なので課税はありません。自宅の相続登記に必要な司法書士をセットすれば他の士業は不要です。あとは遺産分割のサポートと預貯金の解約が主な手続きです。遺産分割に法的期限はありません。しかし速やかに終えることが望ましいです。

聞き取り調査で遺産の預貯金残高には注意が必要です。多くの人は親が亡くなった時点で記載されている通帳残高が預貯金残高だと言ってきます。が、鵜呑みにしてはいけません。父親の預金が妻や子の通帳へと移されていることもあります。これは父親の預金(名義預金)とみなされます。もし無申告贈与ならば時効が成立していたら無罪放免です。なお名義預金には時効はありません。あくまでも父親の預金として遺産に取り込まれます。名義預金か、時効の成立した贈与なのか、この判断は税理士先生も悩ましいところです。ここが確認できたなら3区分が確定します。

《申告をすることで相続税が課税されない人》
相続税には特例があります。そのひとつに自宅敷地を配偶者や、同居の相続人(子)が相続した場合や、同居していなくても自分達の家を所有(俗に家なき子)していない子が相続した場合は、要件を満たせば自宅敷地330㎡までは、80%評価減の相続税大バーゲン(小規模宅地の特例)を受けることができます。

小規模宅地の特例を受けることで自宅敷地の評価がガクンと下がり相続税の課税はありません。ただし、特例を受けるには相続税の申告が必要です。よって税理士の報酬は必要となります。

《相続税が課税される人》
典型的なのは地主さんです。ここで一番の問題は地主の財産構成です。土地等の不動産が占める割合が多く、現金預貯金の割合が少ないのが現状です。相続税は相続開始10か月以内に現金一括納付が原則です。物納や延納は制度としては残っていますが、使い勝手が悪すぎて、実務にはなじみません。私も20年ほど前に1回だけ物納に関わりましたが、それ以降はありません。

 地主相続は、いかに土地を換金し億単位の納税資金を捻出するかに尽きると言っても過言ではありません。税理士、司法書士、土地家屋調査士などの専門職に加え、信頼できる不動産業者が必要です。

また地主の相続対策は、①現金一括納付が円滑にできるよう納税対策、②遺言作成などの遺産分割対策、③最後に相続税を減らす節税対策です。この順番を間違えないことです。