配偶者居住権 中條レポートNo230

配偶者居住権とは、夫(妻)死亡により、残された妻(夫)が自宅で亡くなるまで無償で住み続けられる権利です。

何故このような権利を作ったのか。法務省の見解です。
「家族の在り方に関する国民意識の変化により、夫(妻)の死亡により残され妻(夫)の生活の配慮から創設」

 事例でみてみましょう。
夫が死亡しました。自宅2000万円、預貯金2000万円。相続人妻と子一人の場合。
法定相続分の二分の一ずつで遺産分割をするとします。
妻が自宅を相続すると預貯金をもらえず生活資金に困ります。
配偶者居住権を1000万円とします。(この価格は夫死亡時の妻の年齢等によって変わります。妻の年齢が低いほど高くなります)妻が配偶者居住権を相続すると預金を1000万円相続出来、生活資金を確保できます。

 法務省がいう「家族の在り方の国民意識の変化」とは、親の生活を顧みず法定相続分を子が要求することを想定しているのでしょうか。しかしこのように法定相続分を要求する親不孝な子がどれだけいるでしょうか。
それとも、後妻と先妻の子が相続人の場合を想定しているのでしょうか。(後妻と先妻の子は仲が悪いことが多いため)
不思議な権利を創設したものだという印象はぬぐえません。

 税法上も不思議なことがあります。
上記の例で妻が夫の死亡後すぐに亡くなったとします。
妻が無くなった瞬間、配偶者居住権は消滅します。
消滅すると、子は配偶者居住権が付いてない(何の権利もついてない)完全な不動産を取得することになります。
このとき子は配偶者居住権が消滅したことにより税金はかかりません。相続税の対象にも贈与税の対象にも、所得税の対象にもならないのです。

 配偶者居住権は法務省が言う「残された妻の生活の配慮」ではなく、税金対策での利用が増えるのではないでしょうか。

平等と公平の難しさ野口レポートNo286

平等と公平はよく使われる言葉です。似ていますが意味は違います。どう違うかと聞かれてもよくわかりません。

辞書を引いてみました。平等⇒ 差別がなく等しいこと。公平⇒ 偏らず中正なこととあります。

これでは違いがよくわかりません。単純に考えてみると答えが出てくることがあります。

適切かどうかは別として、身近なところでお正月のお年玉を例に平等と公平の違いを考えてみましょう。

平等⇒ 袋のなかに、小学生が1万円、中学生が1万円、高校生が1万円入っていたら平等です。が、そんな親はいないでしょう。

公平⇒ 袋のなかに、小学生が3000円、中学生が5000円、高校生が1万円入っていました。一般の親が共通し持っている知識と分別であり、これが公平だと思います。

ある相続を例にとってみます。相続人は長男・二男・長女の3人です。長男が親の世話をし、親戚付き合いも引き受け、墓守もしています。また3年にわたり親を在宅介護し最後を看取りました。介護は肉体的に精神的に大きな負担を強いられ、介護した者でなければその苦労はわかりません。状況をふまえ考えれば、長男が厚めに相続するのは自然ではないかと思います。

ところが現在の法律は「均分相続」です。親戚付き合いや墓守はもちろん、介護にしても特別な寄与(壮絶な介護)以外、通常の介護では寄与分として相続分に反映しません。

「均分相続」は「公平相続」ではなく「平等相続」です。この認識は重要です。他の兄弟が譲らず権利を主張したら、長男の相続分は3分の1です。理不尽と思っても常識は法律に勝てません。

法律で決まっている相続分を変えられる人が1人だけいます。それは被相続人になる人です。方法もひとつしかありません。それが遺言です。平等と公平のすき間を埋めるのは遺言しかありません。もし公平を求めるなら遺言の作成は必須です。

◎次は遺産の価値と公平を考えてみましょう。5000万円の預貯金は、相続人の誰がみても財産価値は5000万円です。

これが不動産となるとやっかいです。時価1憶円の不動産はお金に換えて初めて現金や預貯金と公平に比べることができます。

売却すると、譲渡所得税(取得費不明)、仲介料、確定測量、建物解体など、費用を引くと手元に残るお金は7000万円です。

時価1億円の不動産ですが、遺産分割において現金預貯金と公平に比べるなら、実際には7000万円の価値であると、相続人に理解していただくことも必要です。

財産は預貯金だけでなく、不動産、動産、株式、美術品など、多岐にわたり、価値観は相続人により違ってきます。これも遺産分割を難しくします。公平な財産分けは至難の業です。