果実 中條レポートNo252

被相続人が亡くなってから、遺産分割協議がまとまるまでの、被相続人の財産から生み出された収益(果実)はどうのようになるのでしょうか。果実の代表的なものが、賃貸不動産から生じる賃料です。

この賃料は遺産分割協議でその不動産を取得した相続人のものになるか?

正解は、各相続人が法定相続分で取得することになります。その不動産にかかる費用(固定資産税、火災保険料等)も相続人が法定相続分で負担することになります。

しかし法定相続分で取得したことになると、相続人全員が賃料収入を確定申告しなければならない等々、面倒なこともあります。

そのため実務的には、賃料を生出す不動産を取得した相続人が、遺産分割までの賃料を取得することが多いです。

このとき大切なのは、相続人全員に、
「死亡から遺産分割までの賃料は法律的には相続人各々が法定相続分で取得することになるが、手続的に面倒なことがあるので、その不動産を取得する人が取得する」
ことを合意してもらい、書面にしておくことです。

この賃料が結構な金額になることもあります。他の相続人から異論がでた場合は、遺産の配分方法を調整することも必要となるでしょう。

遺産分割協議が終わった後に、この賃料の帰属を決めるのは、揉める原因になるので避けるべきです。

ちなみに、遺言の場合はどうでしょう。
亡くなってから遺言で実際に取得した時期までは、相続人が法定相続分で取得するのでしょうか?

正解は、遺言でその不動産を取得する人が亡くなった時からの賃料を取得し、その不動産管理費用を負担します。

 このように遺産分割は正確な知識で対応することが重要になります。財産分けの話の最初から、しっかりと説明していくことです。

争いの種をなくしていくことが、相続手続に求められます。

弁護士法72条と相続実務 野口レポートNo308

弁護士法72条という法律があります。簡単にいうと「弁護士でない者は、報酬を得る目的で法律事件に関する事務を行ってはいけません。」というもので、俗に非弁行為といわれています。

弁護士でない者が説得や交渉をくりかえし、遺産分割協議を成立させ報酬を得たなら、最たる非弁行為となります。ならば遺産分割協議に立ち合ったら非弁行為になるのか、私はそうは思いません。ただし、4つのNGがあります。

①交渉 ②説得 ③指示 ④分割協議で報酬を得る ④以外はあくまで原則です。司会進行役ならば問題はないと思っています。

 相続人だけでは話は前に進みません。遺産分割協議には、不動産の知識を持っている実務家や、税理士の同席は必要です。

私はできる限り税理士と一緒に同席します。結果として相続が円満かつ円滑に進めば誰からも文句は出ないと思います。

 以前、弁護士会から通知がきました。「貴殿が関わっている業務に対し、弁護士法に違反するのではないかとの情報が寄せられており、調査を実施したいと考えています。」

弁護士法に違反しているからと、東京弁護士会非弁護士取締委員会より事情聴取の依頼がありました。文句があるなら正々堂々といえばよいのに情報は匿名での密告でした。

相続グループの立ち上げや講演の依頼も多く、相続の実務家として知られてきた時期でした。世の中には他人の幸せや活躍をよろこべない人間もいます。「ひがみ」「妬み」もあります。いやがらせでの匿名による密告でした。

呼び出しに応じ弁護士会に出向きました。担当弁護士は主査と副査の2人です。まるで家庭裁判所の「審判廷」のような雰囲気です。

事情聴取が始まりました。自分としては身に覚えもなく、非弁行為をやっている認識はありません。質問には正直に答え、ありのまま対応しました。結局おとがめなしです。

弁護士法は弁護士の利益や職業を保護するためにあるのではありません。国民の人権や財産が、無資格者の無知や悪意によって侵されることのないようにするのが本来の趣旨です。

弁護士法に必要以上に怯えてしまったら、相続の手伝いなどできません。相続で悩んでいる人、困っている人はごまんといます。

仮に「弁護士以外は相続に関わってはいけません。」もしこんなことになったら、巷は「相続難民」で溢れてしまいます。

相続が争いに発展していた場合は、弁護士以外に入る余地はありません。この法律を正しく理解し、やってよいこと、いけないことをわきまえ、迷うことなく実務に取り組むことが大切です。

 円満かつ円滑な相続を目指し社会にも貢献し、相続人の幸せのために一生懸命やっていて弁護士会に呼ばれたら、それは相続の実務家としての証ではないかと思います。