配偶者居住権と信託 中條レポートNo210

民法相続法改正で新しく出来た配偶者居住権(以下「居住権」という)。夫死後、妻が亡くなるまで自宅で暮らせる権利です。但し居住権は、売ることが出来ません。(建物所有者の承諾なければ貸すことも出来ない) また、遺言や遺産分割、家庭裁判所の審判で与えられます。黙っていては貰えません。

こんな相談がありました。
本人A 75歳。30年前に別れた先妻との間に子供Bが一人(50歳)います。現在、後妻C70歳)と二人で暮らしています。後妻Cとの間に子供はいません。Aさんの財産は自宅(評価約2,000万円)と預金2,000万円です。※後妻Cと子供Aとは仲が悪い。

Aさんの要望
・後妻CにはAさんの死後も自宅で暮らせるようにしてあげる。
・後妻Cには生活費も不自由させたくない。
・後妻の死後は自宅を、子供Aにあげたい。(後妻Cの兄弟には自宅をあげたくない)

こんな希望を叶える方法として信託があります。
自宅と預金を信託します。Aさんが亡くなるまではAさんが受益者です。Aさんが死んだら、妻は受益者として自宅に住み、預貯金を生活費に使います。妻が死んだら、信託を終了させ、自宅と預貯金の残りを子供Aが取得します。

しかし、問題なのは誰を受託者にするかです。
後妻Bと中が悪い子供Cを受託者にするのは問題があります。
しかし、他に受託者になってくれる人がいない。

 こんなとき、居住権を活用したらどうでしょう。
遺言で、自宅は子供Bに相続させます。但し、自宅には居住権を設定し、後妻Cが亡くなるまで自宅で住めるようにします。預貯金は後妻Bに相続させます。
後妻Cが亡くなると居住権は消滅しますので、子供Bが自宅を自由に利用出来ます。(死亡時に残った預貯金は、後妻Cの兄弟が相続しますが止むを得ないでしょう)

居住権は不透明な部分(居住権の価格。等々)が多いです。しかし相続実務にこの知識が不可欠になったことは間違いありません。幸せになるための手段として活用していかなければなりません。

20年後にまさかの再会 野口レポートNo266

50歳で一念発起し、ガソリンスタンドから180度の転身をし、不動産業をベースに、相続に特化した仕事に就いて23年になります。

相続一筋ひたすら23年、今までに1000件近くの相続にかかわってきました。失敗した思い出深い相続案件もあります。

未知の世界に飛び込み、開業当時は不安と緊張の毎日でした。最初に相談を受けた相続案件です。父親が亡くなり(母親は他界)相続人は7人です。遺産は、自宅、アパート、預貯金です。相続人は互いに譲らず遺産分割はもめていました。

転業し最初のお客様です。前向きな気持ちで引き受けました。開業当時は専門家のネットワークも乏しく、実務の経験もありません。今まで学んできた机上の知識と相続人の幸せを願う心が支えでした。

今思えば無謀な受託でした。「感謝と譲る心」など通じません。頑張りましたが、遺産分割はまとまりませんでした。自分の手には負えないと、丁寧にお詫びしこの相続案件から手を引きました。

それから20年が経ち久々にご長男に会いました。20年も前の相続です。とっくにかたづいているものと思っていました。ところが未だに進展がなく未解決で、遺産も塩づけ状態とのことでした。

私も当時とは違います。今の自分ならできると確信し、20年前に挫折を味わった、この相続案件を再び引き受けることにしました。

 

当時は聞く耳を持たなかった相続人も、歳を重ね以前とは考えも変わり、自分達の代で解決したいという気持ちになっています。解決するにはラストチャンスと思いました。

ところが状況は20年前とは変わっていました。相続人の1人が亡くなり、1人娘が代襲相続人となります。娘は前婚の夫との間に2人、再婚の夫との間に1人、合計3人の子供がいます。

不幸にも交通事故で亡くなり、再代襲が生じ本来の相続人と合わせて9人に枝分かれし、80代と20代の相続人が混在しています。

長男が主な不動産を相続し、払える範囲の代償金を他の相続人に払うことで6人は合意しました。あとは3人の代襲者です。

会ってみると3人とも素直な子でした。今までの事情と経過を丁寧に説明しお願いしたところ、心を開いてくれました。代償金の3分の1ずつを受け取ることで承諾してくれました。

ここで新たな問題が生じました。相続人の1人(Aさん)が生活保護を受けています。代償金を受け取ったら保護を打ち切られてしまう可能性があります。Aさんは一時的な代償金を受け取るよりも、将来において安定した生活保護を受けることを望んでいます。

役所の担当部署に行き、正直に状況を話しアドバイスを受けました。受け取った代償金は受給してきた生活保護費の返還にあて、結果として従来通り保護を受けられることになりました。

一度挫折した最初の相続案件です。まさか20年後に再び引き受けるとは夢にも思いませんでした。無事に完了し相続人全員から「ありがとうございます」と感謝され感慨深いものがありました。

バイステックの7原則 中條レポートNo209

福祉の世界で、相談者の援助にかかわる援助者の行動規範として有名なものに「バイスティックの7原則」と呼ばれる定義があります。

1.個別化の原則
援助者が相談者一人ひとりの性格や置かれている状況の違いを理解し、問題の個別性を把握すること。

2.意図的な感情表出の原則
相談者が失意や憎悪などの否定的な感情も含め、あらゆる感情を自由に表出できるようにかかわること。

3.統制された情緒関与の原則。
援助者が自分の感情を把握し、援助関係の目的達成のため適切な反応を示すこと。

4.受容の原則
相談者の良い面、悪い面も含めて、あるがままを受け入れること。

5.非審判的態度の原則
相談者の価値観や倫理観によって、相談者を批判したり、それを相談者に押しつけたりしないこと。

6.自己決定の原則
相談者の考えや意志に基づき、自分の人生に関する選択と決定を自ら行えるように援助すること。

7.秘密保持の原則。 

3の「統制された情緒関与の原則」は他の6項目を適切に行うため欠かせません。
「我を知る」ということです。(何事においても大切です)

自分の心の動きが一番わかるのは自分自身です。心がどのように動いているのかを、もう一人の自分にしっかり監督させることです。(簡単ではありませんが….。)

「自分の感情を自覚できているか」「今抱いている感情は誰の感情なのか」「共感の及ぼす過度な感情移入をしていないか」「平常心は保てているか」等々を常にチェックしながら接していきます。

相談者は悩みを持って相談にきます。しかし悩みの本質に気が付いていない方が多くいます。相談者自身に悩みの本質に気付いてもらい解決に導くのが援助者の役割です。

その役割を果たすための7原則です。もちろん相続コンサルにも通じます。

感謝して受け容れる 野口レポートNo265

釈迦は、この世の悩み苦しみの根元は、「思いどおりにならないこと」と見抜いた。だから「思いどおりにしようとしないで、受け容れよ」と言った。その最高の形は「ありがとう」と感謝することだったのです。
~釈迦の教えは「感謝」だった~ 著者小林正観より抜粋。

斎藤一人さんがCDで次のような話をしています。
お釈迦様は悩みをなくそうと思い修行をしました。滝に打たれ、 断食もし、極限まで自分を追い詰めました。難行苦行のあとに言った言葉は「無駄である」でした。

この二つの話は苦悩の根元を見抜いたお釈迦様の話です。

生きることは、思い通りにならないこということです。生きている人はここに気付くことです。「思い通りにしたいのに、それが叶わない」、だから人は悩み苦しみます。「思いどおりにしようとしないで、受け容れよ。」これができれば悩み苦しみは消滅します。

我の強い姑さんがいました。お嫁さんは大変だなと思いました。だが常に明るく振る舞っています。ここへ嫁いだから成長できたと感謝さえしています。思いどおりにしようとしないで、受け容れてしまったのです。家には波風も立たず、姑さんは寿命を全うし旅立っていきました。幸せなおばあさんでした。 

弁護士以外が遺産分割にかかわる場合は注意が必要です。司会進行役に徹し、交渉、説得、誘導をしない、報酬をもらわない、ここさえ気をつければ非弁行為にはならないと思います。

知人からの紹介で、ある相続のコーディネートを引き受けました。

問題点をまとめ、案件に見合った、税理士、土地家屋調査士、司法書士をセッティングし、コーディネートしていきます。

 不動産の価値をいかに遺産分割に反映させるか難しいところです。相続人は2人です。不動産をめぐり遺産分割はもめにもめました。ようやくまとまり、いよいよ明日は遺産分割協議書の調印です。

夕方、相続人の一人から突然電話が入りました。取引先の銀行員に「それでいいのですか」と言われたそうです。この行員に、不動産の価値や、これまでの経緯など分かるはずがありません。

ここで話が壊れたら今までの苦労が水の泡となります。想定外の出来事でした。だが、もう少し苦労をしろとの「天の声」と言い聞かせ、この事実を受け容れました。

本人を説得するには時間がありません。翌朝一番で他の相続人に連絡し、事情を説明し半歩譲っていただき、代償金の調整で何とか収まり、無事調印することができました。

なぜ余計なことを言ったんだ、どうしてくれるんだ、そんな気持ちになっていたらハンコは揃わなかったと思います。

ピンチに追い込まれても、冷静な判断と行動ができたのは、文句や愚痴を一切言わず、この事実を受け容れたからです。