遺留分侵害額請求権 野口レポートNo274

一定の相続人は、遺言によっても贈与によっても奪われることのない最低限の相続分を持っています。これを遺留分と言います。

◎平成30年の相続法改正で遺留分減殺請求権が遺留分侵害額請求権に変わり「金銭債権」となりました。
配偶者が相続人の場合⇒ 法定相続分の1/2が遺留分となります。
子が相続人の場合⇒ 法定相続分の1/2が遺留分となります。
◎直系尊属(父母等)のみが相続人の場合⇒ 1/3が遺留分となります。
◎ちなみに第3相続順位の相続では、相続人である兄弟姉妹に遺留分の権利はありません。遺言があったらその通りです。
遺留分を侵害している遺言も無効にならず有効です。
遺留分は遺留分侵害額請求をして初めて効力が生じます。侵害額請求されなかった遺産は遺言で財産を取得する受遺者に帰属します。
◎遺留分の権利は侵害されていることを知った時から1年、知らなくても相続開始10年が経過すれば時効により消滅します。
◎相続放棄は生前にはできませんが、遺留分放棄は家庭裁判所が認めてくれたなら生前放棄が可能です。

もし父親に愛人ができ、「全財産を遺贈する」こんな遺言を作られてしまったら、あとに残された家族は路頭に迷います。相続人全員が遺留分を主張すれば遺産の半分は取り戻せます。そんな時は「遺留分侵害額請求権」この法律が光り輝くことでしょう。

こんなアドバイスも時には必要です。

◎相手に減殺請求をさせないで兄弟姉妹の縁を切らせなかった話です。
相続人は、長女、長男、二男です。母親はすでに他界し、長男夫婦が寝たきりの父親を在宅介護していました。夜中でも不具合があると2階にいる夫婦のブザーが鳴り、1階に下りて父親の世話をしなければなりません。長男夫婦は肉体的に精神的に限界にきています。

父親は「全財産を長男に相続させる」との公正証書遺言を残して亡くなりました。主な遺産は自宅の土地建物です。

長男は相続手続きの準備に入りました。弟は、兄貴と義姉さんが親父の介護をし、看取ってくれたのだからと、遺言に理解を示してくれました。姉は、私にも権利があると遺留分を主張してきました。

遺言を執行したら遺留分減殺請求をしてくるでしょう。遺留分減殺請求は弁護士から内容証明できます。内容証明は宣戦布告のようなものです。長男に届いた瞬間に姉弟の縁は切れてしまいす。

相続で一度切れた縁は戻りません。相続実務で一番気に留めていることは兄弟姉妹の縁を切らせないことです。

長男には遺言を使わないで、遺産分割の話し合いで自宅を相続することをアドバイスしました。長男が譲ったので姉も一歩引いてくれました。

姉にハンコ代相当の代償金を払い、長男が自宅を相続することで遺産分割は成立し、姉弟の縁は切れずにすみました。

◎減殺請求権が侵害額請求権(金銭債権)に変わったことで、今後は遺留分を考慮した遺言の作成や、生命保険などを活用し金銭債権に対応できる資金の確保など一定の配慮が必要となります。

ツイてる ツイてる 野口レポートNo273

「結婚とは自分と一番相性の悪い人が一緒になることです。だから永平寺に3年いくより、よっぽど修行になりますよ。相性の悪い人にめぐりあったら、この人と結婚するんだなあ~、おれは修行をするんだと思えばいいのです。」これは斉藤一人さんの名言です。

結婚とは人生最大の修行かも知れませんね。修行の辛さに耐えかねて途中でやめてしまう人もいます。が、この修行は一度始めたら生涯続ける覚悟が必要です。まして自分が選んだ道ならなおさらです。

個人情報などの理由で今は公開されていませんが、斉藤一人さんは全国長者番付の常連です。すでに金メダル、銀メダル、銅メダルを勝ちとっています。しかもすべてが事業所得です。イチローもすごいが、一人さんもすごいです。

全国長者番付一位とは、日本で一番税金を払っている人、ある意味では社会に貢献していることになります。

利益があがると、やたら節税を指導する先生や、税金を払いたがらない経営者がいます。どうせ税金に取られるなら、経費になるからと節税目的の生命保険に入ったり、まだ使える車を買いかえたり、分相応な社員旅行を行ったり、目先の節税に走る人がいます。

不必要な経費を使い利益を圧縮したら会社にお金は残っていきません。

税金を払うから会社にお金が残るのです。この積み重ねた内部留保が会社の底力となり非常時の兵糧となります。

 

「ツイてる ツイてる」は、一人さんがいつも口にしている言葉です。

何ごとも必要あって起こること、だからありがたいこと、何があっても「ツイてる ツイてる」です。

ながい人生には運の悪いできごとや、不幸なできごとは必ずやってきます。一人さんはそんな時でも、「ツイてる ツイてる」気がつけば億万長者です。「ツイてる ツイてる」はマイナスをプラス思考にかえてしまう「心のおまじない」です。

遺産相続は、時には恨み辛みが生じる最たるものです。辛い思いをした当事者としては、恨むな、恨むなと言われても恨みたくなるのは人情です。相手を恨めば、また自分に還りエンドレステープのごとく続きます。恨みは自分から断ち切る必要があります。

江戸時代は「仇討免許状」があれば、主君や親の恨みは堂々と晴らすことができました。相手にも返り討ちは認められていましたが、仇討の仇討は禁じられており、恨みの連鎖を防いでいたのです。

ある相続で後妻さんが、遺留分減殺請求を受けました。幼い先妻の3人の子を、我が子のように愛情を持って育て立派に成人させた人です。そのなかの1人から「恩を仇で返す」まさかの遺留分減殺請求です。

継母の恩を忘れなぜ遺留分減殺請求などしたのでしょうか。いずれ自分の愚かさに気づき生涯悔やむことでしょう。

後妻さんに会うたびに、恨むな、恨むなと言い続けてきました。1年が過ぎたころ「野口さんに言われるので、そう思えるようになり気持ちが楽になりました。」とお礼を言われました。恨み辛みが消えたとき不運が幸運に転じツキに恵まれます。

相続は専門家の選択できまる 野口レポートNo272

相続税には次の三つのパターンがあります。

(1)遺産が相続税基礎控除のなかに収まり相続税の課税されない人。

◎この層への対応⇒ 相続税の申告義務はありません。遺産分割には期限がありません。が、先送りすると相続人が枝分かれし、相続が複雑になる可能性があります。速やかに手続きすることが望ましいです。

◎対応する専門家⇒ 相続人確定と相続登記の司法書士。

(2)申告をすることで、小規模宅地や配偶者の税額軽減などの特例が受けられ相続税が課税されない人。 

◎この層への対応⇒ 自宅に同居しその敷地を相続し、申告期限までに引き続き住めば、その敷地330㎡までは80%評価減となります。正に相続税の大バーゲンです。また配偶者が相続する遺産の法定相続分もしくは1憶6000万円までは配偶者の税額軽減で課税なし、要件を満たし、これらの特例を使うことで相続税の課税はありません。

◎対応する専門家⇒ 相続人確定と相続登記の司法書士、特例の相続税申告をする税理士。

(3)遺産が多く特例を受けても相続税の納税が必要な人。

◎この層への対応⇒ 相続開始後10ケ月までに相続税の申告と現金一括納付が求められます。①遅くとも2ケ月以内に相続税の概算を出す。②土地の換金で納税資金を調達する場合は、売却土地の速やかな遺産分割、確定測量、土地売買契約の締結。

特に納税額が数億円単位の地主さんは、コーディネーターが、税理士、土地家屋調査士、司法書士、不動産業者をリードし、いかに10ケ月以内に相続税を現金一括納付させるかに全力を尽くします。

◎対応する専門家⇒ 税理士、司法書士、土地家屋調査士、不動産業者、絶対条件として相続に精通した人でなければなりません。特に要となる税理士の選択は重要です。遺産分割の司会進行ができるか、減価要因を見逃さず適切な土地評価ができるか、税務調査に耐えられる申告ができるか、確定申告や法人決算が内科医なら、地主相続は外科手術のようなもの、資産税に特化した外科医が必要です。

次に重要なポストは土地家屋調査士です。期限内に土地を売却し納税資金を確保しなければなりません。相続での土地家屋調査士の役割は測量だけでなく、隣接地主からすみやかに境界確定や越境物解消の覚書のハンコをもらえるか、人間力が求められる仕事になります。

不動産業者もお客様の事情を理解し、単に価格だけでなく10ケ月の期限内に確実に残金決済ができる買主を選ぶことが大切です。

このように相続にかかわる専門家の選択は非常に重要です。一般人には、税理士、司法書士、弁護士など、士業と呼ばれる人の能力や人間力に差があることなど分かりません。

相続人に代わり、適切な専門家を選んで差し上げることも、相続コーディネーターの大事な役目です。

相続は相続人の人生すら変えてしまう責任の重い仕事です。何を知っているかでなく、誰を知っているかで決まります。そんな専門家に出会えるか、それはもう「運」の世界です。

相続対策の優先順位を誤らない 野口レポートNo271

相続対策には大きく分けて次の三つがあります。

(1)遺産分割対策 ①市街地山林、貸地、古アパートなどの不良資産を生前に整理整頓し分けやすい財産にしておく。②公正証書遺言や付言事項の作成により、財産分けが円滑に進むよう準備をしておく。

(2)相続税納税対策 ①生命保険の活用で納税資金の確保。②生前に相続税を試算し、納税のため売却する土地を選別し、確定測量などを済ませ、10ケ月以内に換金し、現金一括納付ができるようにしておく。

(3)相続税節税対策 ①アパート建築等で不動産の評価を下げる。②資産を相続税評価の低い財産に組み替える。③養子縁組で相続人の数を増やす。④生命保険の非課税の枠を使う。

この三つの対策が同じ方向を向くなら、相続対策を失敗する人はいないでしょう。時には真逆の方向に進むので注意が必要です。

仮の話です。極端な例になりますが説明してみましょう。

◎4億円の土地に4億円の借金をして賃貸マンションを建てました。建築費4億円のマンションの相続税評価は約半分の2億円になります。 だが借金は4億円のままで価値は変わりません。この差に節税効果が生じます。とりあえず節税対策としては成功しました。

◎相続税を減らすことばかりを考え、納税対策をなおざりにしてしまいました。いざ相続が開始し相続税が払えません。しかたなくこのマンションを売却し納税することにしました。 

借金を清算したら残ったお金だけでは相続税が払えません。納税対策を優先し、土地を駐車場にしておけば4億円で売却でき相続税は余裕で払えました。かつ手元にお金が残り遺産分割の原資になったはずです。状況を考えず節税対策を優先してしまった結果です。

◎何とかお金をかき集め相続税は納付できました。大きな財産はこのマンションです。相続人は子が3人です。しかたなく1/3の共有となりました。相続での不動産共有はやってはいけません。後の不動産共憂となります。節税対策を優先してしまい遺産分割は失敗です。

このようにこの三つの対策は同じ方向を向くとは限りません。ならばどの対策を優先しなければならないか見極めることが大切です。

未だに、相続対策=節税対策と思い込んでいる人、借金すると相続税が減ると思っている人もたくさんいます。

先般の相続税基礎控除の改正で、今までは相続税の心配が全くなかった層に納税義務者が続出しています。これらの層に課税される相続税は約50万円~300万円位です。庶民にとっては大金かも知れません。だが、払えない金額ではありません。払ったらそれで終わりです。

税制改正でハウスメーカーなどが、節税対策として二世帯住宅や賃貸併用住宅の建築をすすめています。賃貸併用住宅など自宅部分は生涯空室を抱えるのと一緒です。35年のローンは辛いものがあります。返済が滞り抵当権を実行されたら自宅を失うことになります。

節税対策で300万円の相続税は払わなくて済みました。しかし、多額の借金を背負いこまされ、減った相続税の何倍もの金利を払わなければならないか、冷静に考えれば分かるはずです。

正しい知識と正しい贈与 野口レポートNo270

今回は生前贈与についてお話してみましょう。贈与は契約行為であると認識することが重要です。

贈与者の「あげます」の申し込みに対し、受贈者の「もらいます」の承諾があり、互いの意思が一致して初めて贈与契約が成立します。贈与者のあげるとの意思(一方通行)だけでは贈与契約は成立しません。ここは大事なポイントです。

贈与契約が成立しているのか、単なる名義預金なのか、相続税申告でもこの判断は悩ましいところです。

中元歳暮を考えてみましょう。「いつもお世話になっています。つまらないものですがほんの気持ちです」⇒あげるという意思表示です。「ご丁寧にありがとうございます。」⇒もらうとの承諾です。

申し込みに対し、承諾があり、互いの意思が一致するので、中元歳暮も立派に贈与契約が成立します。

神社仏閣のお賽銭も同じです。お賽銭を投げ入れることは「あげる」との意思表示です。それに対し賽銭箱のフタが開いていることは「もらいます」との承諾であり贈与契約が成立します。

生前贈与は1年間1人に対し、基礎控除の110万円までなら課税されない「暦年贈与」があります。12月31日に110万円贈与しました。翌日の1月1日に110万円贈与しました。1年間に1回なので暦年贈与です。実質は1年間に220万円贈与したのと同じです。 

ただし、相続開始3年以内に行った贈与は相続税計算上いったん相続財産(払った贈与税は控除される)に戻さなければなりません。

もうひとつは「相続時精算課税制度」があります。1月1日現在60歳以上の直系尊属(祖父母や父母)から20歳以上の子や孫へ2500万円までの贈与は申告すれば、取りあえず贈与税は払わなくて済みます。

この制度を使った贈与は、相続開始時に「贈与時の評価」で相続財産に戻し、精算しなければなりません。

不動産や株式の贈与はリスクが生じる可能性があります。1億円で贈与した土地が相続開始時には7000万円に下落していても、贈与時点の1億円の評価で申告です。この逆なら節税効果が生じます。また一度この相続時精算課税制度を使ったら、暦年贈与は生涯使えません。

「住宅取得等資金の贈与」直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の制度です。一定の要件(要件により金額は異なる)を満たせば適用されます。

息子が自宅を新築しました。この制度を知った父親が住宅資金の援助をしたいと、2500万円を建築会社に直接振り込んでしまいました。状況によっては単純な贈与とみなされる可能性があります。

あくまでも息子が住宅を取得するための「資金」でなければなりません。父親が2500万円の「現金」を子に贈与することが大切です。現金を贈与された子が建築会社に払えば非課税です。

法律や税法は万民が公平であるがため存在します。だが正しい知識を知っているか、知らないかでは大きな不公平が生じます。そして法律も税法も知らなかったは通用しません。

均分相続は平等相続と心得よ 野口レポートNo269

昭和23年1月1日より現行民法が施行され、相続制度が変わりました。子が複数いれば同等で分ける均分相続となりました。昭和37年・昭和55年の改正、平成30年の大改正を経て現在に至ります。

相続は相続開始時の法律が適用されます。昭和19年に亡くなった曽祖父がいます。土地の名義は曽祖父のままです。今の時代に相続手続きをしても家督相続が適用され、曽祖父に子が10人いても長男(祖父)が1人でその土地を相続することになります。

現行民法の下、新たな相続制度が適用され71年となりました。今や均分相続は国民の意識のなかに定着した感があります。また戦後のベビーブームに生まれた団塊の世代が相続を迎える時代にもなりました。

相続人の層も若返り、権利意識はますます増してきました。義務を果たさない人ほど権利意識が強く、「法定相続分」という言葉が当たり前に出てきます。「遺留分」「特別受益」などの法律用語も出てきます。

「均分相続」は「平等相続」です。決して「公平相続」ではありません。そして平等と公平の違いは分かりづらいです。

お正月のお年玉を思い浮かべてください。袋のなかに、高校生、中学生、小学生、すべてに一律1万円が入っていれば平等です。

そんな親はいないでしょう。袋のなかには1万円、5千円、3千円と、歳に相応したお金が入っています。これが公平です。

長男夫婦が家業の食堂を手伝い、両親と同居し母の最後をみとりました。姉はすでに嫁ぎ弟は独立し家をかまえています。

父親が亡くなりました。遺産は店舗(食堂)兼居宅です。姉弟が法定相続分を主張してきました。長男が店舗兼居宅を取得するには、姉弟の相続分に見合った代償金を払わなければなりません。お金が調達できなければ家を売って換金し3分の1で分けろと言われます。事業承継は吹っ飛び、長男は仕事と住むところを一度に失います。

裁判をしても、審判官は全ての事情を総合的に考慮し判決を出しますが、法定相続分を変えることはできません。判決が出ても長男は3分の1の遺産しかもらえません。

民法は寄与分制度を設けていますが、通常の親の介護や、家業の手伝いが寄与分として、長男の相続分に反映することもほとんどありません。

理不尽と思っても法律に対し常識は通用しないのです。

長男は姉弟が法定相続分を要求してくるなど夢にも思ってもいませんでした。相続が開始しまさかの展開です。

審判官ですら変えることのできない長男の相続分を変えることができる人が1人だけいます。それは被相続人になる「おじいちゃん」です。方法も1つしかありません。それが遺言です。

こんな悲劇を防ぐためにも、生前に遺言で長男の相続分を増やし、平等に不平等を持ち込み公平にしておく必要があります。

均分相続は平等相続です。相続が開始してからでは何もできません。平等と公平の違いをしっかり認識し、長男への感謝の気持ちを形(遺言)にして残しておくことが大切です。

単純にして最大の疑問 野口レポートNo268

人が亡くなるとその瞬間に何の手続きをすることなく遺産は法定相続分で相続人に所有権が移ります。そして未分割共有となります。これを各相続人の確定した財産にするための話し合いが遺産分割協議です。相続人全員が合意したならどんな分け方をしても有効です。

相続は財産を「棚ボタ」でもらえるのだから有り難い話です。本来なら相続人は幸せになるはずです。また、幸せにならなければなりません。

ところが幸せになるべき相続で幸せになれない人がいます。これはいったい「なぜ」でしょう。この仕事にかかわって、最初に感じた単純にして最大の疑問でした。

「チコちゃんに叱られる」はNHKの人気番組です。「ボーっと生きてんじゃねーよ!」この言葉は流行語大賞にもノミネートされました。

この5歳の天才女児に単純にして最大の疑問を振ってみましょう。

チコちゃん「幸せになるべき相続で、幸せになれない人がいるのはなぜ」。チコちゃんの質問に岡村さんもゲストも答えられません。相続人に聞いてみても分かりません。だがチコちゃんは知っています。

チコちゃんの答えは「相続で幸せになれない人は、親の財産をもらうのは当たり前だと思っている。感謝の気持ちがないからである。」

くわしく教えてくださるのは「心の相続」を提唱し、数多くの実践コンサルティングから独自の理念を創り上げた野口賢次さんです。

野口「さすがチコちゃんだね。わずか5歳で相続の本質を知っているとは恐れいりました。譲った人が幸せになれる。これは確信できる事実です。感謝の気持ちがあれば譲ることができます。“感謝の気持ちと譲る心の大切さ”この気持ちと心が相続人を幸せにします。

争って得た財産や、感謝なくして相続した財産は、重みのない泡銭になってしまいます。人は泡銭では幸せにはなれません。

ご先祖様や親から預かってきた財産は相続人に伝えていくべき大切な

財産です。しかし、その財産のために争ったり、自分や相続人の大切な人生が振り回されてしまったら意味がありません。

 一番大切なのは、財産を持っている人や受け継ぐ人の人生そのものです。その人生に役立つ財産であってこそはじめて意味があります。

 たとえ少なくても相続できた財産に有り難いと心から感謝し、自分の人生観や価値観にもとづき、心にゆとりある人生を楽しみ、その相(すがた)を次の世代に伝えていく、こうした考えこそ本来の相続の姿です。

“ありがとう”の語源は“有り難い”です。“ある”ということが“難しい”つまり“ある”ということがなかなか無いことなのに“ある”のです。それは幸せなことです。だから“ありがとう”なのです。

“ある”のが当然と思っていることは“有り難い”の正反対です。だからありがとうの反対語は“当たり前”なのです。

相続で幸せになれない人は、親の財産をもらうのは当たり前と思っています。感謝の気持ちがありません。これは相続争いをする人の共通点です。だから幸せになれないのです。」

チコちゃんは感謝して譲ることができるかな?

実務家から見た相続法改正 野口レポートNo267

平成30年7月6日に相続法の改正が成立しました。平成31年1月13日から2年後の7月13日までに順次施行されていきます。法律家ではなく実務家として今回の改正の要点をお伝えしたいと思います。
《配偶者居住権の新設》
◎夫が亡くなったあと、自宅を配偶者が相続すれば住み続けることができます。だが配偶者の相続分は1/2です。一般家庭の財産構成は、自宅土地建物(約3000万円)、預貯金が3000万円位でしょう。
1/2の相続分で住居は確保できますが、他の相続人に権利を主張されたら預貯金は相続できず、生活費が確保できません。配偶者の目的は自宅の所有でなく生涯住めることです。居住権があれば目的は足ります。
所有権に比べ居住権の財産評価(推定余命で異なる)は低いです。余った相続分を預貯金の相続に回せます。この法律の裏には親子関係の希薄が存在します。普通の親子ならこんな法律は不要のはずです。
《自筆証書遺言に関する方式緩和》
◎自筆証書遺言の法的要件に「全文を自分で書く」とあります。土地などの財産が多く、まして高齢なら全部自分で書くのは至難の業です。
今回の改正で、財産目録はパソコンや、通帳の写し、不動産登記簿謄本の写しでもよし、ただし各ベージに自筆で遺言者の署名押印が必要となります。今までに比べ使い勝手が数段向上します。
申請すれば法務局が本人確認をし、かつ法律上の要件をチェックし(封印不可)保管します。保管すると家裁の「検認」を省略できます。検認不要はメリットが生じます。法的要件を欠き無効になるものや、要件を満たしていても受遺者や物件が特定できず、使えない自筆証書遺言は驚くほど多いです。法務局のチェックで無効の遺言は減るでしょう。
《預貯金債権の払い戻し》
◎預貯金は可分債権として、遺産分割協議を経ず法定相続分で相続人が払い戻しを受ける権利がありました。だが平成29年12月29日の最高裁の判例変更で、遺産分割を経なければ払い戻しができなくなりました。争ったら払い戻しはできません。相続人は当座のお金に困ってしまいます。そこで救済処置として、遺産分割を経ず銀行の各口座ごとに1/3までなら仮払いを受けられるようになります。 計算式⇒1口座ごとの相続開始時の預貯金×1/3×1/2(相続人2人の場合)=仮払金。
◎だが、遺言や死因贈与で指定されている預貯金は除くとあります。遺言の存在が分からない銀行は、保身を考え相続人全員の承諾を求めてくる可能性があります。それでは仮払いの意味がありません。この制度が目的通り機能すればよいのですが。
《特別寄与者による特別寄与料の請求》
◎民法には寄与分制度がありますが、相続人のみに適用され義父母の介護をしたお嫁さんには権利がありません。改正で被相続人の特別な介護をした一定の親族やお嫁さんは、各相続人に対し特別寄与者として特別寄与料を請求できます。ただし、介護に費した「肉体的」「精神的」な、大きな負担が相応に対価に反映するかは疑問です。

20年後にまさかの再会 野口レポートNo266

50歳で一念発起し、ガソリンスタンドから180度の転身をし、不動産業をベースに、相続に特化した仕事に就いて23年になります。

相続一筋ひたすら23年、今までに1000件近くの相続にかかわってきました。失敗した思い出深い相続案件もあります。

未知の世界に飛び込み、開業当時は不安と緊張の毎日でした。最初に相談を受けた相続案件です。父親が亡くなり(母親は他界)相続人は7人です。遺産は、自宅、アパート、預貯金です。相続人は互いに譲らず遺産分割はもめていました。

転業し最初のお客様です。前向きな気持ちで引き受けました。開業当時は専門家のネットワークも乏しく、実務の経験もありません。今まで学んできた机上の知識と相続人の幸せを願う心が支えでした。

今思えば無謀な受託でした。「感謝と譲る心」など通じません。頑張りましたが、遺産分割はまとまりませんでした。自分の手には負えないと、丁寧にお詫びしこの相続案件から手を引きました。

それから20年が経ち久々にご長男に会いました。20年も前の相続です。とっくにかたづいているものと思っていました。ところが未だに進展がなく未解決で、遺産も塩づけ状態とのことでした。

私も当時とは違います。今の自分ならできると確信し、20年前に挫折を味わった、この相続案件を再び引き受けることにしました。

 

当時は聞く耳を持たなかった相続人も、歳を重ね以前とは考えも変わり、自分達の代で解決したいという気持ちになっています。解決するにはラストチャンスと思いました。

ところが状況は20年前とは変わっていました。相続人の1人が亡くなり、1人娘が代襲相続人となります。娘は前婚の夫との間に2人、再婚の夫との間に1人、合計3人の子供がいます。

不幸にも交通事故で亡くなり、再代襲が生じ本来の相続人と合わせて9人に枝分かれし、80代と20代の相続人が混在しています。

長男が主な不動産を相続し、払える範囲の代償金を他の相続人に払うことで6人は合意しました。あとは3人の代襲者です。

会ってみると3人とも素直な子でした。今までの事情と経過を丁寧に説明しお願いしたところ、心を開いてくれました。代償金の3分の1ずつを受け取ることで承諾してくれました。

ここで新たな問題が生じました。相続人の1人(Aさん)が生活保護を受けています。代償金を受け取ったら保護を打ち切られてしまう可能性があります。Aさんは一時的な代償金を受け取るよりも、将来において安定した生活保護を受けることを望んでいます。

役所の担当部署に行き、正直に状況を話しアドバイスを受けました。受け取った代償金は受給してきた生活保護費の返還にあて、結果として従来通り保護を受けられることになりました。

一度挫折した最初の相続案件です。まさか20年後に再び引き受けるとは夢にも思いませんでした。無事に完了し相続人全員から「ありがとうございます」と感謝され感慨深いものがありました。

感謝して受け容れる 野口レポートNo265

釈迦は、この世の悩み苦しみの根元は、「思いどおりにならないこと」と見抜いた。だから「思いどおりにしようとしないで、受け容れよ」と言った。その最高の形は「ありがとう」と感謝することだったのです。
~釈迦の教えは「感謝」だった~ 著者小林正観より抜粋。

斎藤一人さんがCDで次のような話をしています。
お釈迦様は悩みをなくそうと思い修行をしました。滝に打たれ、 断食もし、極限まで自分を追い詰めました。難行苦行のあとに言った言葉は「無駄である」でした。

この二つの話は苦悩の根元を見抜いたお釈迦様の話です。

生きることは、思い通りにならないこということです。生きている人はここに気付くことです。「思い通りにしたいのに、それが叶わない」、だから人は悩み苦しみます。「思いどおりにしようとしないで、受け容れよ。」これができれば悩み苦しみは消滅します。

我の強い姑さんがいました。お嫁さんは大変だなと思いました。だが常に明るく振る舞っています。ここへ嫁いだから成長できたと感謝さえしています。思いどおりにしようとしないで、受け容れてしまったのです。家には波風も立たず、姑さんは寿命を全うし旅立っていきました。幸せなおばあさんでした。 

弁護士以外が遺産分割にかかわる場合は注意が必要です。司会進行役に徹し、交渉、説得、誘導をしない、報酬をもらわない、ここさえ気をつければ非弁行為にはならないと思います。

知人からの紹介で、ある相続のコーディネートを引き受けました。

問題点をまとめ、案件に見合った、税理士、土地家屋調査士、司法書士をセッティングし、コーディネートしていきます。

 不動産の価値をいかに遺産分割に反映させるか難しいところです。相続人は2人です。不動産をめぐり遺産分割はもめにもめました。ようやくまとまり、いよいよ明日は遺産分割協議書の調印です。

夕方、相続人の一人から突然電話が入りました。取引先の銀行員に「それでいいのですか」と言われたそうです。この行員に、不動産の価値や、これまでの経緯など分かるはずがありません。

ここで話が壊れたら今までの苦労が水の泡となります。想定外の出来事でした。だが、もう少し苦労をしろとの「天の声」と言い聞かせ、この事実を受け容れました。

本人を説得するには時間がありません。翌朝一番で他の相続人に連絡し、事情を説明し半歩譲っていただき、代償金の調整で何とか収まり、無事調印することができました。

なぜ余計なことを言ったんだ、どうしてくれるんだ、そんな気持ちになっていたらハンコは揃わなかったと思います。

ピンチに追い込まれても、冷静な判断と行動ができたのは、文句や愚痴を一切言わず、この事実を受け容れたからです。