先ず理解者になる 野口レポートNo283

相続や身の上で悩んで相談に見える人は、解決者ではなく理解者の存在を求めています。ここを認識し対応しないと問題の本質が見えてきません。

行政や社会福祉協議会などの後援を得てNPO法人:相続アドバイザー協議会が全国展開している相続フォーラムがあります。基調講演や複数のミニセミナーも行われます。「心の相続」をテーマに基調講演も何回か務めさせていただきました。

同時に複数の相続相談会も行います。相続アドバイザー養成講座(40時間)を修了し、一定の研修を受けた会員が相談員を務めています。毎回多くの市民が相談に訪れます。

経験の浅い相談員は専門家として解決者になってしまいます。答えを出してしまったらそこで話は止まってしまいます。

話を十分傾聴し、相手から「この人は自分の気持ちを分かってくれる」と思ってもらうことです。極まって泣かれてしまうこともあります。そして本音が出てきます。本音が出れば問題の本質が見えてきます。本質が見えたら理解者から解決者の立場になり、専門家として問題の解決を考えていきます。

資産家の父親が亡くなりました。相続人は母親と長女とAさん(長男)です。跡取り息子のAさんはそれなりの不動産を相続しまた。

残念なことにAさん夫婦は子宝に恵まれませんでした。そして不幸にも55才の若さで急逝してしまいました。

相続人はBさん(奥様)と母親です。長女が「弟の固有の財産は相続してもよい。が、先の相続で父から相続した不動産は全て母に相続させなさい。」と遺産分割に口をはさんできました。

長女は連日のように遺産分割協議書にハンコを押せとせまってきます。Bさんは精神的に追い詰められ相談に見えました。話を十分に傾聴し胸のつかえを全部吐き出してもらいました。

法律を頭から外しBさんの幸せを考えてみました。争えば2/3は取れるでしょう。が、同じ敷地に住んでいる長女一家と、いやな思いをしながら10年20年と過ごさなければなりません。ご主人の固有の財産があれば、独り身のBさんには足りる財産です。

Bさんはまだ50才です。「ここは譲ってしまい、10年20年と明るく楽しく過ごしましょう。財産でなく自分の幸せを取りましょう。」これが私の答えでした。Bさんはこの一言でハッとし、大事なことに気づき、あとは号泣でした。

 数日後Bさんから別人のような声で電話が入りました。「遺産分割協議書にハンコを押しました。」Bさんはその後、実家の近くに移り充実した日々を過ごしています。

今でも毎年欠かさず季節の品を送ってくれます。お礼の電話を入れると明るい声がかえってきます。13年前の相続案件ですが、あの時のアドバイスは間違っていなかったと思っています。