任意後見制度 中條レポートNo269

後見制度には二つの柱がありますが、ここで述べるのは任意後見制度です。

この制度の特徴は、「元気なうちに(意思能力がしっかりしているうちに)、自身が選んだ人に、意思能力が衰えた後のことを託す」という点です。
この取り決めを行うために、本人と託された人が結ぶ契約を「任意後見契約」と言います。

意思能力が衰えた際に、自分が選んだ人に、自分の代わりに預金の出し入れや不動産の売買等の法律行為を行ってもらうためには、家庭裁判所に自身が選んだ人を監督する監督人を付けてもらう必要があります。監督人には、弁護士や司法書士がなります。

しかし、任意後見契約後、意思能力が衰えても監督人が指定されず、任意後見が始まらないことが多いのが現状です。

何故任意後見を始めないのか。
・監督人に報告を行うのが面倒だから。監督人は家庭裁判所への報告義務があるため、家庭裁判所が間接的に関与し、窮屈感がある。
・監督人を付けると、その監督人に支払う費用がかかる。(この費用は本人のお金で支払います)
これらが主な理由です。

任意後見契約を結ぶとき、意思能力が衰えるまでの期間、本人の様々な法律行為を本人の代わりに行う事務委任契約を結ぶことが一般的です。この事務委任契約により、意思能力が衰えた後でも日常のことは何とかなるため、「わざわざ面倒で費用がかかる監督人を付けて任意後見を始める必要があるのか?」という疑問が生じるのです。

これが任意後見を始めない大きな理由です(法律的には正しくないです)。もちろん、不動産の売買等の重要な法律行為は、任意後見を始めないと出来ません。

法務省はこれを問題視し、任意後見が適切に始まるよう対策を講じています。教科書的には法務省の指針が正しいのでしょう。しかし、現場がそれに順応していません。

成年後見制度は過渡期にあり、実務運用が変化しています。地域によっても対応は異なります。今後の動向から目が離せません。

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