相続と生命保険受取金 野口レポートNo285

生命保険受取金は契約形態により、税法上や民法上での扱いが異なってくるので注意が必要です。

パターン(A) ①契約者(保険料を払った人)⇒父 ②被保険者(保険に入った人)⇒父 ③受取人(保険金を受け取る人)⇒子。

ここでお金の流れを見てみましょう。保険料を払ったのは父です。保険会社を通していますが、亡くなった父から子がお金を受け取ったことになるので「相続税」の課税です。

パターン(B) ①契約者⇒子 ②被保険者⇒父 ③受取人⇒子。子が保険料を払い、自分が受け取るので「所得税」の課税です。

パターン(C) ①契約者⇒母 ②被保険者⇒父 ③受取人⇒子。

保険料は母が払っています。存命している母からお金を受け取ったことになるので「贈与税」の課税です。

また、パターン(A)で受け取った保険金は民法上の相続財産にはなりません。指定された受取人が固有の財産として受け取れます。相続放棄した相続人でも受け取ることができます。

◎新型コロナウイルスの感染拡大で、世の中えらいことになっています。コロナの影響で廃業や倒産に追い込まれてしまう個人商店や零細企業もあります。心労で亡くなる人もいるかも知れません。また感染し命を落とす人もいます。

 多くの個人商店や零細企業は金融機関から借入れをしています。そして配偶者や子が連帯保証人になっていることもあります。

パターン(A)の生命保険に入っており、受取人が保証人になっていたら、受け取った保険金は債権者に差し押さえられてしまいます。契約者が元気なうちに受取人を変更してください。

保証人でない子を受取人にし、相続放棄すれば債権者は手が出せません。保険金は残された家族の大切な糧になります。

◎ある母親が亡くなりました。相続人は兄と妹の2人です。母親には生前に某銀行に1500万円の預金がありました。

銀行員に言われるがまま、一時払いの生命保険に加入しました。1500万円の銀行預金が長男を受取人とした生命保険に入れ替わりました。高齢の母親には何の意図もありません。

パターン(A)の契約です。法律ではこの受取金は民法上の相続財産にはなりません。指定されている長男が受け取れます。しかし、2年前までは銀行預金です。常識で考えると本来なら兄が750万円、妹が750万円を相続することができたはずです。

このまま遺産分割をしたら妹は納得しないでしょう、兄には受け取った保険金を考慮し、財産分けすることをアドバイスしました。妹も納得し遺産分割は無事に終了しました。

法律と常識は一致するとは限りません。そして常識は法律には勝てません。また多くの争いは常識のなかで生じます。時には法律にとらわれず、常識で考えることも必要です。

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