「法定後見」と「任意後見」 中條レポートNo194

意思能力が衰えた人が法律行為を行う時に使う後見制度には「法定後見」と「任意後見」があります。二つの制度の違いを説明します。

法定後見は家庭裁判所(以下「家裁」という)が本人の代わりに法律行為を行う人(以下「後見人等」といいます)を選ぶ制度です。(この人に後見人になって欲しいと希望を出すことは出来ますが、最終的判断は家裁がおこないます)
後見人等が出来ることは、法律に定められていること、及び家裁が許可したことです。
意思能力が衰えてしまい、法律行為が出来なくなった人が利用する制度です。

これに対して任意後見は元気な内に、将来、意思能力が衰えた後のことを、自分で決める制度です。

誰に、どんなことを頼むかを、頼まれた人と公正証書による契約で取り決めます。頼まれた人を任意後見人といいます。
任意後見人が出来ることは契約で決めるので、なんでも出来るかというとそうではありません。本人のためにという大原則の元、出来ることは限られているのが現状です。

監督機能がそれぞれの制度で違います。
後見人等は、家裁に監督されます。
しかし最近は不正防止のため、後見人等に家裁が選任した監督人を付け、監督を強化するケースが増えています。

任意後見は、家庭裁判所が選んだ任意後見監督人が監督します。
本人の意思能力が衰え、家裁に任意後見監督人を選んでもらってから任意後見が始まります。
(ですから任意後見人には必ず監督人が付きます)

後見人等を監督する監督人も、任意後見監督人も司法書士・弁護士等がなり、監督事務を家裁に報告します。監督人を通して家裁の目が光っているということです。

取消権に違いがあります。
後見制度を利用している人は完全に意思能力が無い人ばかりではありません。意思能力はあるけれど、不動産を売却する等の重要なことを行うには助けが必要だという人もいます。意思能力は衰えてはいますが、この人たちが行った法律行為は有効です。

後見人等には、本人が行った行為で本人のためにならない行為を取り消すことが出来る権利が与えられます。
しかし、任意後見にはこの取消権がありません。

訪問販売で高額な商品を買って困るという人には取消権がないと本人を守れません。この取消権がないことで、任意後見を法定後見に変えることもあります。

超高齢化社会において意思能力問題は避けて通れません。
まずは二つの制度の違いを正確に知ることです。理解したうえで、どのような対策をとるかを考えることが大切です。

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