DNA鑑定で血縁関係が否定された場合、法律上の父子関係が取消せるか。
婚姻期間中に生まれた子だけれど、事実は他の男性との子でした。
母親が子を代理して、法律上の父子関係を取り消す訴えを起こしました。
最高裁は、民法の「嫡出推定」の規定は、DNA鑑定の規定より優先されると判断しました。
第772条(嫡出の推定)
妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
この推定を覆すには、嫡出否認の訴えによらなければなりません。(民法775条)
しかしこの訴えを出来るのは父親だけです。
では、婚姻期間中に生まれた子供は、父親が訴えなければ父子関係を取り消せないのか。
そうではありません。
「夫が外国にいた、監獄にいた等の場合等は推定が働かず、親子関係不存在確認の訴えが出来る」と最高裁は言っています。
(親子関係不存在確認の訴えとは民法772条の推定がされない子に対して父子関係を否認するもので誰からでも訴えることが出来る)
しかし、この事例は夫が出張中だったが月に2~3度家に帰っていて夫婦関係が保たれていたから父子関係の推定が働くため親子関係不存在の訴えが出来ないということです。
なんだか違和感がある判決です。
但し、5人の裁判官の内、2人の反対意見がありました。
また「社会の実情に沿わなくなれば、立法政策の問題として検討すべきだ」と補足意見もありました。
非嫡出子の相続分に関する最高裁の判決が覆り、嫡出子と同等になったように、社会情勢の変化で今後変わることもあるかもしれません。