死後、財産を渡す方法に死因贈与があります。実際どのような場合に利用するのでしょうか。
遺言と死因贈与の違い
どちらも効果があらわれるのは死後です。遺贈は財産が遺言者から受遺者に移転することを遺言者が決める単独行為です。死因贈与は、贈与者から受贈者が無償で財産を貰う事を約束するお互いの契約です。
死因贈与を選ぶ場面は、お互いの意思を確認し合い財産を承継していきたい場合です。
死因贈与の問題点。
死因贈与は双方の契約ですが、贈与者の単独の意思で契約を取消せる特殊な契約です。不動産の場合、死亡を始期とする所有権移転仮登記をすることが出来ますが、仮登記をしてもこのことは変わりません。(但し、仮登記を抹消するためには双方の合意か裁判の判決が必要になりますので、取消す抑止力にはなります)
このように特殊な契約ですから利用は限られたケースになるでしょう。死因贈与を選択するのは次のような場合が考えられます。
- 自分の死後に財産を与える見返りに、生前に受贈者の世話になりたい場合。「Aが死んだら、Bに自宅を贈与する。但し、Aが生きている間、Bは生活・療養費として月額〇〇円をAに仕送りすることを条件とする」
これを負担付死因贈与といいます。生前に面倒を見てもらいたい場合に利用が考えられます。(受贈者が負担をある程度行えば死因贈与は取り消せないとした裁判例があります。上記の場合、仕送りをある程度すれば贈与者の撤回も制限されるでしょう)
- 確実に財産を承継したい場合。遺贈では、遺言者死亡後、受遺者はいつでも、遺贈の放棄が出来ます。(民法986条)しかし死因贈与は双方の契約ですから、受贈者は当然には贈与を取り消す事は出来ません。贈与者が死亡後に受取らない(契約を履行しない)と、受贈者の債務不履行としての責任が生じてくるからです。
財産価値がないけれど引継いで欲しい財産がある場合、財産を受けることを拒まれにくくするために利用が考えられます。