バランス

人間の智慧とは、
(一)先の見通しがどれほど利くか
(二)又どれほど他人の気持ちの察しがつくか
(三)その上何事についても、どれほどバランスを心得ているか
ということでしょう。
[ 森信三 一日一語 ] より

バランス感覚。
一長一短に養えるものではありません。

遺産分割(納税)スケジュール 中條レポートNo243

遺産分割協議書を作成して行う(遺言書が無い)場合の相続手続のスケジュールです。まずは相続税がかかるかどうか。
3,000万円+600万円×法定相続人の数の金額以上財産があるか否か。

相続人が奥様と子供二人の場合は4,800万円以上あれば相続税が課税されます。(各種特例を適用し相続税が課税されない場合もありますが、申告は必要になります)

相続税が課税されれば、10カ月以内に相続税の申告、納税が必要になります。
手続に期限が出来るということです。
期限を超え納税すると、利子税、延滞税が課せられます。

相続で得る財産で納税する場合は、相続人全員で遺産分割を成立させることが必要になります。(遺産分割がまとまらない場合は、法定相続分で相続したと仮定し、各相続人が相続税を支払います。この場合、各種特例が使えない、手持ちの財産で相続税を支払う、等々のデメリットが生じます)

次に相続税を、相続した預貯金や手持ちの資金で支払えるかが重要になります。
支払えない場合は、相続した財産(不動産や株式(手持ちを含む)等)を売却して納税しなければなりません。

売却するための時間を考量しなければなりません。特に不動産は時間を要します。
期限内にやることが増えることは、スケジュールがタイトになるということです。

また、相続税の支払いは相続人間の連帯納付義務がありあすので、個別に考えるのではなく、相続人全員で支払う計画をたてることが大切です。全員が納税するための必要資金を確保することが重要になります。

ですから相続手続を行うコンサルタントには「いつまでに何をするか」、相続手続の全体像を把握しスケジュールをしっかり立てることが求められます。

スケジュールを立てるうえで一番の気がかりは相続が争族になってしまい、話合いがまとまらず期限切れになってしまうことです。
ですから、手続の最初に相続人全員に遺産分割協議がまとまらない場合の不利益の危機意識を共有してもらうことが大切になります。

ここを認識してもらい、相続手続のゴール(納税)に向けて手続を開始していきます。

ちょっと待った!その賃貸併用住宅 野口レポートNo299

借金をしてアパートを建てると相続対策になると多くの人は思っています。たしかに1億円の借金をしたなら、資産から1億円が債務控除されます。これで相続税が安くなると誤解してしまいます。

借金は返済しなければなりません。ひとくちに35年といっても気が遠くなる時間です。相続税が安くなったと錯覚しますが、相続税が借金と入れ替わったことに気がつく人はいるでしょうか。

借金しても相続税を減らす節税効果は生じません。仮に、資産が2億円で負債が0円とします。2億円―0円=2億円(課税価格)です。この課税価格に対し相続税が課税されます。

銀行から1億円の借金をします。手元にあるうちは資産が1億円増えます。が、借金も1億円あるので、資産と負債が行って来いで借金しても課税価格は変わらず相続税も変わりません。

ならば、借金で得た1億円でアパートを建てたならどうなるか、建築費1億円のアパートの相続税評価額は約70%です。さらに借家権割合が減額され、約5,000万円の評価となります。1億円の借金に対し、資産は5,000万円しか増えません。この差に節税効果が生じます。相続税が安くなるのは借金ではなく、借金で得た現金でアパートを建てるからです。借金しないで手持ち資金でアパートを建てれば、シンプルで確実な相続税対策になるでしょう。

築する建物を区分所有登記にしたいと、顔見知りのAさんが相談に見えました。この登記のメリット・デメリットを話しました。

Aさんの賃貸併用住宅の事業プランを聞いて耳を疑いました。

◎1階フロアが自宅部分(自分達の居住エリア) ◎2階3階が賃貸部分で4室(1室賃料12万円) ◎キャシュフロー(返済後の手取り)10万円 ◎建築費8,000万円、全額借入35年返済。

あまりにも無謀な事業計画です。手漕ぎボートに家族全員を乗せ外洋に出ていくようなもので、転覆したら万事休すです。

新築物件なので取りあえず満室になるでしょう。が、新築の雰囲気など5年がいいところです。キャシュフローが10万円しかありません。もし、1室でも空室が発生したら「持ち出し」です。2室空いたらさらに持ち出しです。手持資金が底をついたら返済不能、銀行に抵当権を実行(競売)され自宅まで失うことになります。

相手は建てることしか考えていません。途中で行き詰まっても助けてくれません。最後は全て自己責任です。

冷静に考えれば賃貸併用住宅の居住部分は、生涯において空室をかかえるのと同じです。仮に全部が賃貸だとしても、全額借入35年返済のアパート経営など綱渡りをするようなものです。

その気になっていたAさんですが、私の話を聞いて冷静さを取り戻し、家族会議をひらきこの事業計画を白紙に戻しました。

 登記の相談に見えたおかげで間一髪セーフ、Aさんと家族の人生を守ることができました。

リズム

すべての物事は、リズムを感得することが大切である。
リズムは、根本的には宇宙生命に根ざすものゆえ、
リズムが分かりかけてはじめて物事の真相も解り出すわけである。
中んずく書物のリズムの如きは、著者の生命の最端的といってよい。
[ 森信三 一日一語 ] より

物事には宇宙の原理原則が働くのでしょう。

過信

自己の力を過信するものは、
自らの力の限界を知らぬ。
そして力の限界が見えないとは、
端的には、自己の死後が見えぬということでもあろう。
[ 森信三 一日一語 ] より

過信は禁物です。

法定後見制度利用概況 中條レポートNo242

令和2年の法定後見関係の統計からです。(「成年後見関係事件の概況」HP検索)

法定後見制度を利用する場合、本人の親族が後見人等になっている割合が令和2年は19.7%と20%を割りました。

この数字が親族は後見人等に選ばれないという根拠にされることがあります。
これは正しいでしょうか。

後見人等を付けてくださいと家庭裁判所(以下「家裁」という)にお願いするとき、通常は後見人等の候補者を立てて申請します。(最終的には誰を後見人等に選ぶかを決めるのは家裁ですが、家裁は候補者を重視します)

この候補者の内、親族の割合が公表されました。
令和2年は23.6%です。
そもそも、親族を候補者として申請している割合が低いのです。

 また、申立人(家裁に申請する人。原則は本人の親族)の一番は、市区町村長です。身寄りがなく申立てる親族がいない場合にとられる手段です。二番目が本人の子、三番目が本人です。(意思能力の低下が低い場合、本人が申立て出来ます。身寄りがない人が利用することが多いです)

 これらのデータから「身寄りのない人の後見利用が増えている」ということがわかります。独居高齢者が急増しているという、世の中の状況が、親族割合の低下の大きな要因だと思われます。

ですから、親族の割合が低下していることが、家庭裁判所が親族を後見人等に選ばれないことにはならないと思います。(親族間に争いがなく、財産が複雑でなければ、親族が選ばれるというのが私の実感です)

一方、法定後見制度を使うと面倒だから、利用しなくて済むよう、事前に対策を講じている人が増えていることも、親族割合の低下の要因になっていることも確かだと思います。

後見制度の利用・運用状況は日々変化しています。状況を正確に把握し制度の利用を検討することが大切です。

兄弟 野口レポートNo298

兄が死んだ。姉から電話でそのことを知らされ時、私は思わず小さな声で「万歳!」と叫んだ。16年待った。長い16年だった。

なかにし礼さんの著書「兄弟」の冒頭の一節です。

中西一族は満州から引き揚げ小樽に住んでいました。兄が家を担保に借金し、ニシンの網に賭けて全てを失います。

年月が過ぎ礼さんは石原裕次郎さんと出会いました。これが作詞家なかにし礼を生んだ原点です。最初の作品は菅原洋一さんの「知りたくないの」でした。作詞家、作家としても大活躍します。

一方の兄は、博打好き、見栄っ張り、会社を設立しては倒産し借金が残る。この繰り返しで倒産させた会社は10数件に及び、その度に礼さんが尻ぬぐい、肩代わりした借金は計り知れません。

この「底無しの甘ったれの怪物」が、ゴルフ場の開発に手を出しました。礼さんは知らぬ間に社長にされていました。違法が発覚し会社は倒産、兄は姿を消しました。兄の借金2億円を加えると、全財産を処分しても、5億5,000万円の負債が残りました。

礼さんは生活にも困窮する借家住まいとなりました。が、めげずにヒット作品を連発し、この借金を返すことができました。

絶縁してから16年、兄の死を知り思わず「万歳!」と叫びました。尋常でない兄の「呪縛」から解き放された瞬間でした。

 相続での遺産分割協議は、人間の本性が表に出てきます。自分に嘘がつけません。この時の姿が「本当の自分の姿」です。                                                          

◎ある母親が亡くなりました。兄夫婦が母の最期を看取りました。遺産は自宅と預貯金で、相続人は兄と弟の2人です。

母は弟を溺愛し、ほしいものは何でも与えました。弟は「はしっこい」が、兄は「とろい」と、よく言っていたそうです。

「とろい」と言われた兄は、長男ゆえに我慢と苦労を強いられ、思いやりと人望ある人間に育ちました。

「はしっこい」と言われた弟は、甘やかされ、ずるくて身勝手な人間に育ちました。未だ結婚できず独身です。

この兄弟の遺産分割協議に立ち会いました。兄が口火を切ります、

墓守や親戚付き合いなどを考慮し分割案を出しました。が、弟は聞く耳を持ちません。兄に対し言いたい放題です。兄はこぶしを握りジッと耐えています。よく我慢していると思いました。

弟は1円単位までこだわります。兄は自宅を相続し、あとは譲り預貯金のほとんどを弟が持っていってしまいました。

世の中には礼さんの兄やこの弟のように、人格がまるで違う兄弟もいます。同じ親から生まれてきたとはとても思えません。

親の財産もらうのは当たり前、有り難いとの気持ちがない、感謝がないから譲れない、相続争いをする兄弟の共通点です。

多くを見てきましたが、相続は子育ての集大成です。相続争いや、兄弟仲が悪いのは、親の子育ての失敗だと思います。