弁護士法72条 中條レポートNo145

弁護士法72条
「弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件等の法律事件に関して法律事務を取り扱うことができない。(略文)」

弁護士以外の者が法律事務を行う事を禁止する法律です。多くの職種の人がこの法律により業務領域を制限されます。職域確保のためか弁護士会の取り締まりも厳しくなっているようです。

この法律の立法趣旨は何か。職域確保のためか。そうではありません。
法律事務はその人、その人の財産を扱う仕事です。人生さえも左右させます。だからその法律を取り扱う人を厳しく制限しているのです。
弁護士になるため厳しい試験を課し、なった後も厳しい倫理規定で縛ります。違反すると懲戒処分に付されることもあります。
実際、弁護士の方々の精神的負担は重く心労により病になるひとも多いと聞いています。その負担に耐えられなければ人の人生、財産を左右させる法律を扱ってはならないということです。

弁護士の仕事は戦争請負人です。依頼人に代わって相手方と戦うのです。戦略を立て、戦術を立て武器を使って戦います。
戦略・戦術を立てられず無防備で(弁護士資格なく)戦場にいったらやられます。結果、依頼者に迷惑をかけることになります。わかったつもりで法を使うと危険です。

弁護士法72条の立法趣旨、弁護士の役割を理解したうえで、弁護士以外の人が出来ることを考えてみます。
「戦争を弁護士に依頼するべきか」
「依頼する内容」
「戦争をやめる時期」

これらを感情だけで判断してしまいがちです。(戦争に勝つことがよいこととは限りません)戦いの渦中にいる人は自分を見失います。大局的な見地から依頼者と共に考え(出来れば依頼者と弁護士の話合に同席する)、進む方向性を見つけていく役割は重要です。

しかしこの役割は簡単ではありません。
依頼者、そして弁護士からも頼られるような人間力、ぶれない理念が求められるからです。日々の鍛錬が欠かせません。

税制改正 中條レポートNo144

平成27年1月1日以降の相続から基礎控除が引き下げられます。
・現行 5,000万円+法定相続人の数×1,000万円
・改正後 3,000万円+法定相続人の数×600万円

同時に居住用小規模宅地特例※の面積が緩和されます。(※亡くなられた方が居住していた土地を一定の要件を満たした相続人が取得すると土地の評価を減額してくれる特例)
・現行240㎡の内80%が減額。
・改正後 330㎡の内80%減額。

相続税評価額1億円100坪の土地では約2,200万円評価がさがります。
90㎡分(330㎡-240㎡)の8割 72㎡分少なく評価されるからです。

この特例緩和の減税効果が基礎控除引き下げの増税効果を上回ることはあるのでしょうか。相続人が子供2人の場合で考えてみます。(税率構造の改正に影響を受けないと仮定)
基礎控除は現行 7,000万円 改正後 4,200万円 差額2,800万円
72㎡分少なく評価されて2,800万円さがる土地です。
坪単価が約129万円以上の区域です。かなり高額な土地です。

このことから減税効果があるのは都心の一等地に100坪以上の土地に住む限られた人であることがわかります。改正の趣旨でも国は次のように言っています。
「基礎控除の引下げにより、都市部に不動産を有する人への相続税の負担が大きくなることから“激変緩和措置の一環”としてこの特例について見直した」

平成22年から始まった相続税改正、最初に手がつけられたのが小規模宅地適用の厳格化。この厳格化は世間ではあまり報道されませんでした。しかし特例適用が受けられなくなった人の増税効果は基礎控除引下げに匹敵するものがありました。そして今回は緩和策。

小規模宅地が相続税の税制改正の味付け役になっているように感じます。
食の味を大きく変えてしまったり、一部の人にしか感じないような味の変化だったり様々です。このことは、今後も小規模宅地が税制改正の味付け役として使われる可能性があることを示しています。

税制改正は魔物です。そして全ての人に平等な改正は不可能です。税制改正に振り回されないようにしたいものです。