物でなく価値を売る 野口レポートNo261

お客様からの紹介でおばあちゃん(85歳)の相談を受けました。自宅の土地が、25年前に亡くなった父親名義のままなので、相続の手続きをしたいとのことでした。

相続人は妹が1人だけです。妹は姉が土地を相続することで気持ちよく遺産分割に協力してくれました。

司法書士をコーディネートし、相続登記をすれば済む問題と思われました。しかし、話を聞いていくうちに相続する土地上の建物は、おばあちゃんと別れた元夫の共有名義であることが分かりました。

おばあちゃんにはお世話してくれる人がいません。唯一血縁の妹も高齢でお世話はできません。頼りになるのは「お金」です。

1人暮らしが困難になったなら、相続した土地を換金し、老人ホームに入るのがベストです。しかし、土地の上には他人名義(元夫)の建物がのっています。このままでは売ることができません。話を傾聴していくと元夫は近くに住んでいるとのことでした。

元夫を訪ね事情を丁寧に説明し、建物の持分を元妻へ贈与してくれるようお願いしました。すでにわだかまりも消えており、贈与を承諾してくれました。固定資産税評価は低く贈与税の課税はありません。

これで土地と建物はおばあちゃんの単独名義となり、いつでも不動産を売却し老人ホームの入居費用に充てることが可能となります。

相続コンサルで一番大切なことは、一度頭から法律・税金・財産を外し、相手の幸せを心から考えてみることです。すると問題の本質が見えてきます。本質が見えれば何をすればよいかが分かります。

おばあちゃんへ幸せの道筋をつけることができたのも、話を傾聴したこと、相談者の幸せを心から考えたことです。問題を全て解決し、おばあちゃんから「神様だよ」と言われ手を合わせられました。

知人を介し相談を受けました。相談者は高齢(83歳)の女性です。

18年前に母親が亡くなりました。まだ相続手続きをしていません。相続人は56年間疎遠で父親の異なる妹1人とのでした。

遠隔地に住んでいる妹へ会いにいきました。妹(72歳)は姉が56年間連絡をくれなかったこと、母親が亡くなったのを知らせてくれなかったこと、誤解も重なり何をいまさらと立腹しています。孫の代まで憂いが残ると説得を重ね、何とか合意することができました。

だが姉には会いたくない、ハンコは押すから野口さん1人で来てほしいとのことでした。それではこの相続を引き受けた意味がありません。目的は相続を機に疎遠であった縁を取り戻してあげることです。

何とか妹を説得し、姉と一緒に遠隔地に出向きました。こちらがお姉さんですよ、こちらが妹さんですよ、と紹介しました。

56年目の感動の再会です。姉はこれまでのことを詫びました。わだかまりはとけ、署名押印も無事に終わりました。単に相続手続きで終わったら物を売っただけ、縁を戻したことで価値を売ったことになります。

物を売るか、価値を売るかでは大きな違いです。これからの時代、いかに付加価値を売ることができるかが勝負です。

達人の境

一、腰骨を立て
二、アゴを引き
三、つねに下腹の力を抜かぬこと
同時にこの第三が守れたら、
ある意味では達人の境といえよう。
[ 森信三 一日一語 ] より

なかなか難しいですね。

生き方

朝起きてから夜寝るまで、
自分の仕事と人々への奉仕が無上のたのしみで、
それ以外別に娯楽の必要を感じない・・・というのが、
われわれ日本人のまともな庶民の生き方ではあるまいか。
[ 森信三 一日一語 ] より

天から与えられた使命を果たすこと。
日本人の生き方。

選択肢 中條レポートNo204

相続問題を解決する方法は一つだけではありません。
選択肢があります。
相談者の話を傾聴し、問題の本質を見極め、解決方法を選択していきます。

選択するためにはアドバイザー自身が、選択肢があることを知ら(気付か)なければなりません。そして選んだ選択肢にはどんな注意点があるのかを把握し、選んだ方法を的確に実行していくスキルが必要です。(アドバイザー自身で実行出来ないときは、任せられる専門家がいるかが重要になります。一人で全ては出来ません)
正にアドバイザーの真価が問われるところです。

このことを遺言の相談の場面で見てみます。
財産を引き継ぐ方法は遺言だけではありません。選択肢は
・贈与。(贈与税の負担がある場合は相続時精算課税制度を利用)
・信託。(家族信託)
・養子縁組。(第一順位の相続人をつくる)
・売買。
・なにもしない。(法律に任せる)
・とりあえずの遺言にする。(要件が整ったら正式につくる)

 選択肢を選ぶための判断材料は。
・その方の遺言を作成する理由、背景。
・家族構成、家族の歴史。
・その財産が築かれたルーツ。
・財産をどのように承継させていきたいか。
・財産の種類、価値。(相続税の課税の有無)
・遺言者の意思能力の程度。
・その他。

選択肢を考慮せず、相談者の言われるまま実行してしまう。アドバイザー自身に最適な選択肢を実行するスキルが無い(頼める人がいない)ためその手段を選ばない。
このようなことがあってはなりません。

相談者を幸せに導けるかどうかは、アドバイザーの資質が大きく影響します。

走れメロス 野口レポートNo260

「メロスは走った、無二の親友セリヌンティウスとの約束を守るために、死力を尽くして走った。刑場に突入したとき、まさに陽は一片の残光を残し消えようとしている。」多面的な人間の心を描いた「太宰治」の小説“走れメロス”です。

私がこの物語に出合ったのは高校一年生の国語の教科書のなかでした。身はボロボロになりながら最後は約束を守ったメロス、友を信じ待ち続けたセリヌンティウス。約束を守ること、人を信じることの大切さを学びました。

この物語の感想文のコンテストがありました。感動し、「信じることは人間としての愛である」など、生意気なことを書いて最優秀賞に選ばれたことがありました。

高校時代は電車通学でした。友人と約束し駅で待ち合わせをしたものです。あるときいくら待っても友人がきません。約束の時間は過ぎています。電車を数本送ってギリギリまで待ちました。おかげで駅から学校まで駆け足です。

息せき切って教室に入ると、なんと彼がいるではないか、「待っていたのに。」私も少々立腹です。「悪かったな、好きな女の子がいたので前の電車に乗ってしまった。」そんなことで約束を破るとは……。卒業後、彼が活躍しているとの話は聞きません。

家内の実家は信州のお寺です。毎年8月の上旬には最大のイベント、「施餓鬼」の大法要があります。当日はたくさんの檀家さんがみえます。家内は手伝いに行くのが恒例になっていました。ご無沙汰しているので私も一緒に行ってまいりました。

住職の義父は90歳をすぎて現役です。真夏の昼下がり大法要が始まりました。多くの僧侶にかこまれ、途切れながらも読経を続ける老師(義父)の姿はとても尊く、合掌しながら胸に熱いものがこみ上げてきました。

家内を嫁にむかえるとき、義父とひとつの約束をしました。「娘を川崎へ嫁がせてよかったと、必ず思っていただけるようにします。」この約束は一度たりとも忘れたことはありません。

あれから35年(平成17年)、紆余曲折はありましたが天職にめぐり会うことができました。相続の実務家として世間からも認めていただけるようになりました。感動を与えられる講師にもなりました。“感謝の気持ち”と“譲る心の大切さ”一貫しこの理念をつらぬき、相談や依頼を受けた相続案件も、争いをさせることなく解決に導けるようになりました。

義父との約束をようやく果たせた気がします。遅い歩みでしたが、約束を守るべく努力を積み重ね今の自分がいます。それを信じ待っていてくださった義父がいます。1年後に他界しましたが生前に約束を守ることができ、本当によかったと思っています。

約束を守ること、信じることの大切さ、改めて感じました。

宙ぶらりん

すべて宙ぶらりではダメです。
多くの人が宙ぶらりんだからフラつくのです。
ストーンと底に落ちて、はじめて大地に立つことができて、
安泰この上なしです。
[ 森信三 一日一語 ] より

迷うのは宙ぶらりんだからですね。

準備

ものごとの処理は、まず手順を間違えぬことから・・・
しかしそれには、あらかじめ、準備しておく必要がある。
[ 森信三 一日一語 ] より

こつこつと丁寧に
ですね。