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 このままでは納得できない 三商レポートNo45

「相続税がかかるわけではないので、税理士さんに相談することもない。裁判をする気もないので、弁護士さんにお願いすることもない。でも、このままでは納得できない。こういう時は誰に相談したらいいのでしょうか?」

こういう相談が多くあります。Aさんの場合もそうでした。

「母が数ヶ月前に亡くなりました。父は既に亡くなっています。大阪の姉が20年ほど前に母を引き取り、同居して面倒を見てきました。長男の私に相談もなく、姉が喪主もつとめ全てを仕切っています。先日、その姉から200万円が振り込まれてきました。でも、母の財産を全く教えてくれません。このままではどうも納得できません。相談にのってくれますか。財産を調べる方法はないでしょうか?」いろいろな事情を背景に、本音は「もっともらえるのではないか」にあるようです。

まず、大阪の家の名義人は誰か、母名義なら時価はどのくらいかを調べるため、土地・建物の「全部事項証明書」を取寄せる。20年前に住宅を購入する際、長女の夫3分の2・母3分の1の共有登記になっていた。そして、母死亡後すぐに、母の持分は長女名義に移転していた。原因は「相続」。公正証書遺言があったと推測する。Aさんに「遺言はありましたか?」「家庭裁判所から検認の呼出がありましたか?」とお尋ねするが、「いいえ」との答え。自筆証書遺言の場合は、相続人全員に呼出通知があり、家庭裁判所で開封・検認のうえ、「検認済み証」がないと相続登記はできない。

 次に、公正証書遺言を調べる。どこの公証役場でも、相続人であることの証明(戸籍謄本)と本人であることの証明(運転免許証・パスポート・健康保険証などのいずれか)があれば、公正証書遺言があるかどうか調べてくれる。やはりあった。ただし、保管してある公証役場まで行かないと見ることはできないし、謄本もとれない(相続人本人であることがわかれば、最寄りの公証役場にファックスで送ってくれると便利だと思う)。Aさんはすぐに大阪に行き、公正証書遺言の謄本を入手した。作成日は、20年前に家を購入した直後だった。遺言には、「(自宅の)持分は全て長女に相続させる」「遺言執行人を長女に指定する」とあった。しかし、遺言にはその他の財産についての記載はなかった。Aさんは、姉から送られてきた書類に判を押したいきさつから、銀行・郵便局・証券会社に母名義の口座があるという。遺留分減殺請求も可能な状況だった。

「でも、遺留分を突きつけると姉弟の絆が切れますよ」

「もうとっくに切れています」とAさん。

まず話し合いの機会を作るため、内容証明郵便により、「現預金や金融商品の額を教えてください」と伝えるようアドバイスする。Aさんが書いた、きつい表現の原文に「姉さんが母の世話を長年続けてくれたことに感謝しています。話し合いにより円満に済ませたい。」と追記してもらう。

大阪に行き、姉と話し合ったAさんから「ありがとうございます。おかげさまで話がつきました」と報告があった。

  やはり遺言はあった方がいい。娘の世話になる母の思いを伝え、争いを防いでくれている。しかし、娘だけへの配慮では、同じ相続人の1人として、また長男の立場として納得できない。幸いAさんも姉も賢明な方だった。顔を合わせて話し合い、不満はあってもその場で決める。先送りしない。互いに譲り合い、感謝の気持ちを持ってのぞむ。相続で大切なことを実行された。きっと、わずかでも姉弟の絆を残して帰ってこられたのだと思う。
(2008.3.5)




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